ガタンゴトン、ガタンゴトン。電車は進む、何処までも。
「…太陽君、何処行こうか」
「優一さんが誘ったのに何にも計画してなかったんですか?あの優一さんが?」
「なんだい、あの優一さんって」
優しくて紳士的でそれでいて聖母様みたいで少し涙脆くて怒ると怖くて色っぽくて可愛くてしっかりしてて、でもちょっと抜けてるとこもあって優しくて、それが、少し残酷だったりして、でも綺麗で博学でそれから。
「…うん、ありがとう。相変わらずで安心したよ」
誰もいない電車内に優一さんの一言一言が染み込んだ。
でも待って。相変わらず?いや確かに可笑しなところはあったけど、あった、けど。確かに優一さん歩けてるし髪型違うしそりゃあ、そうだけど
「…優一さん何する気なの」
「痛くないよ」
「注射じゃないよ」
「そうだね、でも大丈夫だよ」
確証もないことを言われた。添えられた笑顔はあの聖母様みたいに綺麗な笑顔だった。僕はそれどころじゃなかった。
「この電車の行き先は最初から決まってるんだ」
ガタンゴトン。
「さっきの駅最初で最後の駅だったんだよ」
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
「ねえ知ってる?太陽君」
ガタン、
「線路は世界と世界の間なんだって」
電車が、急ブレーキを掛けた。僕の身体が反動でぐらりと傾く。僕がそうなったのに優一さんはまるで平気そうに座席に座っている。何故か電車のドアが開いた。僕はドアに吸い込まれるみたいに動いていた。彼は言った。
「またね、太陽君」
そっちの世界が君の世界だよ。
「えっ一体全体何のこと」
プシュー、ぴしゃり。
ドアは僕に限りなく非情だった。
雨優って凄く電車とか線路とかが似合うと思うんです。
2012.11.29 (Thu) 17:25
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