*イナクロ29・30話の後















目の前で転がった彼は凄く、

「剣城君っ!」

ほんの一瞬だけ今が試合中であることを忘れて、剣城君に駆け寄ろうとした。したんだけどほんの少し爪先が動いた瞬間に直ぐマークされてしまった。そして僕は我に返った。

「…剣城君」
「……なんだ」
「何で君が心配そうにしてるのさ」
「お前が、そんな顔してるからだろ」
「…だってさっき、凄い、痛そうだったし」
「痛くねえ」
「嘘だあ」
「痛くないっつの」
「嘘吐きー」
「お前のに比べたら全然だろ」
「……」
「悪い」
「ううん、そうじゃなくて、覚えててくれてるんだと思って」

剣城君は不思議そうな顔をした。そう、僕にとっては覚えててくれてるなのだ。彼はそうして僕と痛みを共有している。




2012.11.27 (Tue) 08:18


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