「どうした、いいんだぞ」

目の前には手を伸ばしても、伸ばしても伸ばしても伸ばしても届かなかったその人で。確かにその首も腕も全部揃っている。食べてみたくて仕方なかったこの人の味を、覚えてもいいのか?

「…やだよ、そう言って一回きりだって言い始めて、それでまた、行っちゃうんですから」
「じゃあどうしたら証明出来る?」

何の証明?何の、何のですか。今更必要ないでしょうが。

「俺の気持ち。」
「はあ?何言ってんの」
「好き」
「…俺を、許すの」
「は」
「いいの、戻れないぜ」
「…別にいい、いらないさ」
「いらないの」

目が覚める風が吹いても目の前はピンク色の髪を遊ばせる霧野先輩しかいない。笑いはしてるがニヤニヤ嗤い。気に入らない。嘘、それでもいいって思ってる。思えるほどになってる。悔しい、これも嘘。

「ほら」

まあ、そこまで許された俺が先輩に噛み付くなんてもう時間の問題だったよね。そうだよね。




2012.11.19 (Mon) 16:26


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