「何となく怖いけどどうしようもないくらい、安心するんだよね」

勝手に寄ってきて勝手に隣に座り込んで勝手に寄りかかられた俺は呆れたようにソイツを見た。体温が高いようだった。それはいい。

「…変に懐かれてもどうすればいいのか分からないんだが」
「一方通行?いいよそれでも。こうしてくれるだけで、そこにいてくれるだけでいいんだ」
「…無欲だな」

いや、そんなことは無い。雨宮は生きることによく執着する奴だ。確か、そういう奴だったように思う。

「そんなことないよ、生きるのに貪欲だよ」
「在るべき必要な欲だ、大事にするんだな」
「…うん、ありがとうごめんなさい」

礼を言われて謝られた。

「いやあさ、そうしなかった時期があってさ」
「今違うだろうが」
「剣城君、剣城君怖い」
「怖くない」

怖くない、怖くない。
笑う雨宮の頬は変わらず温かい。




2012.11.15 (Thu) 16:52


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