出来るならきっちり喰らってしまいたい。その存在がここに生きていたという証さえも亡くすまでの、確実な絶対。絶対的な獲得。そう、したい。所望しようか。
「おい手が止まってる」
「大人しく寝てればいいじゃないですか」
「違うな、最初から寝ちゃいねえよ」
「ですね、声の周波数がいつもと何ら変わりないみたいですし」
「ミミガイインデスネー」
「ソーナリマスネー」
シャーペンを小さく放り投げた。駄目だ、やっぱり乱れが出る。イヤになるよ、本当に。自分のベッドからむくりと起き上がった南沢さんはジラジラと此方を見ている。沢山見ている。
「消化不良」
そう呟けば棒みたいに倒れ込んで眠った。分かれる気がしない。
というかこっちの方が消化不良だ。モヤモヤする。生殺し。喰い損ね。寸止め。お預け。
…目の前で逃げられるくらいなら俺はもう前なんざ見ない。
それかきっちりかっちり。
2012.10.26 (Fri) 12:59
prev│next