足元に蛙がいた。そう言えば昨日雨が降っていたような気がする。蛙は嫌いなわけではないけれどあまり良い印象はなかった。見た目とか、そういった問題でもなく。
「踏むのか」
霞んで曇りきった視界が急に映えて、何時の間にかその蛙の元にしゃがみ込んだ霧野を見据えた。これくらいのことでは動揺しない。一応、霧野は。
「別に踏まねえから。そんな恨みもないわ」
「そうかあ、ふうん、ちょっと期待したのにな」
「変な期待すんなよ…」
「……ふうん。」
罪なき生き物にそんな仕打ちを期待するとか、やっぱりこいつはよく分からない。人間は、分かれない。
霧野はふと人の悪い笑みを浮かべあっという間に攻め込んできた。
「餌同然としか考えてないくせに」
あくまでも言葉で。それでも俺は眉を動かしたくらいで特にかかったりしなかった。お前の方が有利なシチュエーションなんてやらない。
「だからどうした?」
「それくらいなんだなと思ってさ、お前の人情」
餌は有効活用。それが俺らの教訓だから仕方ない。
諦めな。
「あ。」
霧野は驚いた顔をして惨劇を見た。まだまだ。こんなの小さい方だっつの。
2012.10.23 (Tue) 16:08
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