「なあにそれ!」

第一声がそれだ。ただいまと言おうありがとうと言おう。そう思って帰ってきたのに、これだ。俺の回路が繋がらなかった。

「なあに訳分かんないみたいな顔してんですか?」
「思い当たる節がないし」
「そうですか、まあそうですね」

満面の、可愛らしい笑顔。けどそれが上っ面だってことは周りの鋏を見なくたって分かった。

「俺、馬鹿ですね」
「どういう意味でだよ」
「俺ライバルにわざわざ手ぇ貸しちゃったわけかー…あーもう譲らなきゃよかった」
「話噛み合ってないぜ」
「そんな気ないですからね」

また笑う。鋏は勢い良く飛んできて背後の壁に思いっ切り突き刺さった。ご立腹(?)みたいだ。

「格好悪いね、それ」
「そうか」
「さいっこーに!」
「最高にって最悪だな」

狩屋のすぐ逸らす目が今日は俺をずっと見つめている。それに異常を感じるべきだったのか。それとも感じていたのに近付いたのか。

「あー。ねえ先輩、お腹空きましたよねー」

俺の腹がぐうと鳴いた。




2012.09.24 (Mon) 16:52


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