「…お前、何やってんの」
「見て分からないか。ふむ、君に言わせればただの粘土遊びさ」
「はあ?」
「晴矢、君は何になりたい?」
「…お前、つか、何…って…」
「私は、水になりたいね」
風介がこびり付く粘土だらけの指で粘土の塊に波模様を描いた。それからその塊を一撫でして風介が此方を見れば、楽しげに笑っていらっしゃる。まあまあ。珍しいこともあるもんだ。
「水ね」
「そうだ。まず水道管を通って海になる。そして蒸発して雲になり、雨になって降ってくる。それから土に染みて地下に染み出して地下水になるよ。そして人間に飲まれるよ」
風介は笑ってる。笑ってる。
何が楽しかった?そんな話を俺にして、何が言いたいんだよ。
「君は何になりたい?」
今度はあざとい可愛い笑顔。ご丁寧に四つん這いになって。
生憎俺にゃあ効かねえよ。
その態度は無視して最小限のエネルギー使用で答えた。
「俺は兎に角キチンと生きれてキチンと死ねる生き物になりゃあそれでいい」
水。
お前の妄言によればそれには『終わりっていう死』がねえんだな。
「何、お前、死にたくないの」
「楽しそうだね、」
「覚えててほしいの」
「そうかもね、」
「何にでもなりたいの」
風介は愉しそうに笑ったままだ。
初カオスちゃん
2012.08.04 (Sat) 23:01
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