7話(loto)
レンヤから提案されたのは、僕が心から望んだこと。
なのに、何でこんなに悩んでしまうんだろう。
この鳥籠から出て自由になれる。
ルナもミズホも、レンヤも一緒に。
だけど、逃げれば追いかけられるだろう。
父上は血眼で私達を探すのだろう。
そして見つかれば、ルナは嫁がされ、レンヤとミズホは罰を受ける。
私は良くて幽閉だろうか?
「ダメだな………。」
ネガティブで意気地無し。
だからこそ、父上の期待にも応えられなかったと言うのに………。
私は何一つ変わらない、変えられない。
そんな自分が嫌になる。
書斎の机に伏せる。
ここは王子のための書斎だ。
帝王学やこの国のことを学ぶためにある。
昔はここで何十時間も勉強したものだった。
そのころはまだ、僕の隣にレンヤはいなかった。
幼い僕は今よりも大きく感じた城の中でとても心細かったのを覚えている
だけど、幼いミズホを守らなくてはならなかったし、何より王子としてふさわしくあることを求められた僕はいつかずっと気を張りつめたままだった。
そして、命を狙われ、誰にも気を許すことができなくなっていった。
そんな時だった、レンヤが僕の騎士になったのは。
心も体もボロボロだった僕をあらゆるものから守ってくれた。
そんなレンヤに僕が心を開くのも時間はかからなかった。
「…逃げるか。」
一緒になりたいのはレンヤだけなのだ。
偽造でも他の誰かと、と考えるだけで心が痛い。
トントン
部屋のドアがノックされる。
人払いをしていたはずなのに。
入って来たのは一人の兵士。
余計に理由がわからない。
「王子、王がお呼びです。」
嫌な予感がする。
しかし、行かないと言うわけにもいかない。
兵士の後についていくと、いつも王がいるはずの執務室へとは行かずに地下へと向かって行く。
地下は牢屋ぐらいしかないはずだ。
どういうことかわからずに警戒を強める。
一番奥の独房の前に父上は側近と共にいた。
独房には誰も入っておらず、扉も開いている。
「父上?いったい何の…うわっ!」
父上に近づくと側近に何かを顔に吹き付けられる。
立ってもいられないほどのめまいに襲われ、その場にしゃがみこむ。
「な、にを………。」
兵士に後ろ手に手錠を掛けられ、牢に放り込まれる。
力が入らなくて自分の体さえも支えられない。
「レンヤには気づかれてないだろうな。」
側近が兵士に問いかける。
兵士は緊張したように敬礼した。
「はい。全く気づかれておりません。」
そういや、レンヤには何も言わずに来てしまった。
心配、かけてしまったな。
霞む意識の中、そんなことを考えていた。
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