4話(夜凪)

王子が朝食をお召し上がりになった後、俺は、彼をミズホに任せ、ルナ様の元へと行く。
ミズホはああ見えて強い。
気配を読むのもうまいし、武術も嗜んでいる。
伊達に王族の付き人をしていない。
だからこそ安心して彼を任せられるんだが。
…さて、俺はミズホに頼まれた事をしよう。

「ルナ様、朝ですよ。起きて下さいませ。」
「うーん、あと二時間…。」

カーテンを開けるが、ルナ様は布団に潜ってしまう。
こういう時は、この手を使うのがいいと、ミズホが言っていた気がするので実行する。

「今すぐ起きないと、朝食、抜きにしますよ。」
「だめぇ!起きる!起きるから!」
「…ふふ、おはようございます。」
「ふぇ?レンヤ兄?」

効果はてきめん、ルナ様は飛び起きた。
挨拶をすると、きょとんとする。
いつもはミズホが起こしているからだろう。

「実は、ルナ様にご相談がありまして。ミズホと代わってもらったんです。」
「ふーん?そっかぁ、お兄ちゃんのことだね?」
「よくわかりましたね。」
「レンヤ兄が私に相談することなんて、それくらいしかないしね。」

悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ルナ様は言った。
さすが、俺の事をよくわかってらっしゃる。

「ふふ、でもお話の前に、朝食がお先です。朝食の準備をしておきますので、お召し替えを。」
「はーい。」

ルナ様が着替えている間、俺は朝食の準備をする。
食事を並べ、紅茶をいれておく。

「レンヤ兄ー、髪結んでー。」
「いいですよ。では、こちらに座ってくださいませ。」

椅子を引き、座っていただく。
櫛を使い、寝癖を直し、髪を梳きながら、上の方だけ纏めリボンで縛る。

「はい、出来上がりました。」
「有難う。じゃあ、いただきます。」

少しやんちゃなルナ様だが、やはり王女なだけあって、とても綺麗な食べ方をする。
そんなルナ様を見ていたら、何だか微笑ましい気持ちになった。

「レンヤ兄。」
「なんでしょうか?」
「座ったら?その方が話しやすいよ。」
「いや、私はこのままでいいですよ?」
「私が嫌なの!」
「…では、こちらに失礼します。」

座るまで納得しなさそうなので、とりあえずルナ様の前に座る。

「それで、相談って?」
「…実は私、クイエートを連れて、此処から逃げ出そうと考えているです。」
「へえ、そうなんだー!いいね、愛の逃避行!ロマンだね!」
「ルナ様…。」
「ごめんごめん、冗談だよー!…でも、私は賛成だよ。お兄ちゃんには幸せになって欲しいし。」
「ですが、そうした場合、クイエートの分の重圧が、貴女にかかってしまうかもしれない。私はそれが心配なのです。」
「私の事は心配しなくても平気だよ?ミズホちゃんもいるし。」

ニッコリと笑い、そういうルナ様。

「それにね、ずっと思ってたんだ。何でお兄ちゃんばっかり辛い思いをしなきゃいけないんだろうって。私が男でお兄ちゃんより先に生まれてたら、お兄ちゃんは苦しまずにすんだんじゃないかって。…だから、お兄ちゃんが幸せになるためなら、私は何でもしたい。」
「ルナ様…。」
「大丈夫!私の事は気にしないで?どんなことだって熟してみせるよ!」

いつもの太陽のような笑みを浮かべ、背中を押してくれた。
彼女もまた、クイエートを好きだから。

「…ありがとうございます。」
「こちらこそ!お兄ちゃんをお願いします。」
「はい、任せて下さい。」

この時俺は、改めて、クイエートを幸せにしてやらないといけないという思いが強まったのだった。



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