12話(夜凪)

隠し通路を抜けると、城の裏にある森へ出る。
そこにはすでに馬が三頭用意してあった。
傍らにはひとりの騎士が立っていた。

「イサルド。」
「お、やっときたねー。待ってたよー。」
「すまないな、いろいろやってもらって。」
「これくらい、お安いご用さ!」

そう言ってニヤリと笑う彼は、イサルドと言って、俺の幼なじみであり、親友だ。
だから、今回の事も協力してもらった。

「ラウン、久しぶりだな…元気だったか?」

そう言って黒の毛並みの馬を撫でると、ヒヒーン!と高らかに鳴く。
俺の愛馬のラウンだ。
やはり逃げるなら、慣れている馬の方が早いだろうと思い、連れてきてもらった。
そして残りの二頭のうち一頭は、カズトシの愛馬である、茶色の毛並みの馬のカイルだ。
あと一頭は、白い毛並みのスノウ。
以前クイエートと二人で海に言った時に、クイエートが名付けた馬。
今も、クイエートにすり寄っているほど、彼に懐いている。

「今日は、一頭に二人で乗ってもらいます。私達は馬の扱いに慣れていますから、早く着くことが出来るはずです。ミズホはカズトシの後ろに、ルナ様はイサルドの後ろに、そして、クイエート様は私の後ろに乗って下さい。」
「わかった。」
「りょうかーい!」
「わかりました!」
「では、乗って下さい。」

カズトシがカイルに乗った後、ミズホを後ろに乗せ、落ちないよう紐でカズトシの腰とミズホの腰を縛る。

「カイル、今日も頼むな。」

カズトシがそう声をかけると、高らかにヒヒーンと鳴いた。

「イサルド、ラウンに乗ってくれるか?」
「OK!」

俺の愛馬ラウンには、イサルドとルナ様が乗る。
カズトシたちと同じ様に、紐で縛る。

「よし…ラウン、イサルドと、ルナ様を、頼むぞ。」
「よろしく、ラウン」

二人でラウンを一撫ですると、元気よくヒヒーンと鳴いた。

「…さ、クイエート様。」
「ああ、よろしく頼む。」

スノウにまたがり、クイエートを上に乗せる。

「これを腰に縛って下さい。」
「わかった。…これでいいか?」
「はい。」

クイエートが縛った紐を、自分の腰にも縛る。

「クイエート様、しっかり捕まってて下さいね。」
「ああ!」
「では…行くぞ!」

三頭の嘶きが響く。
俺たちを先頭に走り出した。


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