11話(loto)
助けに来たレンヤに抱えられ、隠し通路を通る。
助けに来てくれるとわかってたから怖くはなかった。
それでも、レンヤといるといるとすごく安心する。
これから待ち受けるのは、逃亡の日々だというのに。
「…レンヤ、ルナやミズホはどうするんだ?」
「一緒に逃げますよ。この先の隠し部屋に隠れてもらっています。そこで落ち合う予定です。」
そこまで話が進んでいたのかと思うと、もっと早くレンヤに返事をしておけば良かったと思う。
私がレンヤから離れられないのは、わかっていたのだから。
こんな騒ぎにならなくて済んだのに。
でも、ここで謝るのはきっと何か違う。
「…レンヤ、ありがとう。」
レンヤは何も言わず僕の背中をあやすように軽く叩く。
わかってると言ってくれてるようで。
「ここです。」
行き止まりでレンヤが言う。
壁の石を複雑な順番で蹴ると壁が開き、部屋が姿を現した。
「兄さん!レンヤ兄!」
そこにはろうそくの光に照らされてルナとミズホがいた。
レンヤに下ろしてもらい、二人を抱きしめる。
「すまない、二人とも…。」
巻き込む形になってしまった。
ここに置いていっては、余計酷い目に合うとは言っても。
「…いいの!兄さんが気にすることじゃないんだから!」
「それよりも!今度から黙ってどこかに行かないで!」
二人を抱きしめる手に力を込める。
二人の気持ちが嬉しかった。
心配をかけてしまって申し訳なかった。
「…さて、そろそろ行きましょう。ここでのんびりして捕まるわけには行きませんから。」
レンヤがそう言った時、僕達が来た他とは反対の壁が開く。
レンヤが僕たちをかばうように前に出る。
開いたその暗闇から、出てきたのは一人の若い男だった。
「結構騒ぎになってる。通路は確保してるから、早く!」
「カズトシ…!」
レンヤが構えを解くのを見て、敵ではないのだと判断する。
騎士の姿をしているところを見るとレンヤの同僚だろうか?
なんとなく顔も見覚えがある。
「イサルドは?」
「今は他の兵士が出口に近づかないように誘導してる。すぐに合流する予定だ。」
思い出した。
カズトシもイサルドも王室騎士の中でも、手練で強いと言われている者達だ。
兵士たちがレンヤも含めて三人の中で誰が強いか話しているのか小耳に挟んだことがある。
レンヤに聞いてみたらその時のコンディションや精神状態、その他のいろんな要素で勝ち負けは変わるものだと、苦笑されたけど。
そんなことを考えているとカズトシが近づいてきて、ニッコリと笑う。
「王子、無事でよかったです。」
本当にそう思ってくれてることがわかる。
信じてもいい人がまだ城にもいたことがわかる。
「お疲れだとは思いますが、急いでいただけますでしょうか?」
頷くとレンヤはその部屋にあった大きめのリュックを肩に担ぐ。
多分、逃亡に必要最低限の物が入っているのだろう。
「行くぞ。」
カズトシを先頭に隠し通路を行き、城から抜け出した。
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