10話(夜凪)
思い当たるところは全て探した。
だが、どこにもいなかった。
…あと一つだけ、行っていない場所がある。
「…出来れば外れて欲しかったんだけど。」
俺が向かったのは地下牢の入り口。
不自然にいる兵士達。
…当たりとしか言いようがない。
「…たく、めんどくさい…」
あまり騒ぎは起こしたくはないんだけれど、致し方ない。
ああ、先にあいつらに連絡しないと、逃げる時に困るな…。
そう思い、ある人物に電話する。
「…もしもし、俺。…ああ、例の件、頼むよ。…まあな。とりあえず、俺は今から暴れてくるから。」
そう言って電話を切った。
「…さてと、では行きましょうか。」
俺は遂に行動にうつした。
地下牢の前にいる兵士に話し掛ける。
「すいません。」
「レンヤさん!」
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です。私、これから地下牢に用があるのですが、通らせていただけませんか?」
「「え…?」」
あからさまに顔を歪める兵士達。
「すいません、今は王の命令で誰も通すことは出来ないのです。」
申し訳なさそうに話す。
だが俺は行かなきゃいけない。
「…すいません。」
退く気配はないので、とりあえず謝って兵士達を手刀で気絶させる。
「早く、行かないと…クイエートが、待ってる。」
いつもではあまり出さない本気をだし、階段を下がっていく。
ところどころに兵士がいたが、構ってる暇はないため、一瞬で気絶させて進んでいく。
「…めんどくさい。」
人が多すぎる。
そこまでして、クイエートを閉じ込めたいのか。
そんなことは俺がさせない。
こんなところで閉じ込められていたら駄目になってしまう。
クイエートはもっと世界を知るべきだ。
もっともっと幸せになる権利はあるはずだ。
「…邪魔。」
障害があるなら、俺が全部取り除く。
わからないことがあるなら、俺が全部教える。
「…どこだ…?」
地下牢を隈無く探した。
残るは奥の独房のみ。
残りの兵士達も気絶させ、向かう。
「クイエート!」
「レンヤ!やっぱり来てくれたんだね!」
「少し下がって下さい。壊しますので。」
「あ、うん。」
クイエートが下がったのを確認したと同時に、剣で人一人出れるくらいに鉄格子を切る。
「レンヤ!」
「よかった、ご無事で…。」
飛び付いてきたクイエートをしっかりと受け止める。
さて、こんなことしている場合ではない。
クイエートを抱え、走り出す。
「行きますよ。」
「え、レンヤ、そっちは行き止まりだぞ!?」
「大丈夫です。」
一見ただの壁だが、ここには仕掛けがある。
「クイエート、こことここ、押して下さい。」
「?わかった。」
クイエートが押したと同時に、俺は足で下の方を押す。
実は決まった三箇所を同時に押すと、なかった扉が開くのだ。
「なにこれ…。」
「一部の人しか知らない仕掛けです。まずばれることはないでしょう。…さあ、行きますよ。しっかりと掴まっていて下さい。」
俺達が中に入ったと同時に扉が閉まる。
そして目の前に広がる階段を駆け上がった。
「レンヤ、逃げたはいいが、どうするんだこれから!」
「遠くへ逃げます。準備は万端ですから。大丈夫、無事、逃げ切れます。俺に任せておいてください。」
「…わかった、信じてる。」
そういって、俺の服をぎゅっと掴む。
俺はより一層強く抱き抱えた。
そして何があっても必ず護ると誓った。
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