8話(夜凪)


クイエートにあの話をした後、変更点をルナ様に伝えようと、クイエートを書斎へ送り、一度席を外す。
そして代わりにミズホに警備を頼んだ。
ルナ様と話していると、数分後に何故かそのミズホが慌てたように、戻ってきた。

「何かあったのか?」
「…クイエート様が!いないんです!」
「…落ち着け。どういうことだ?」
「…あのあと、すぐに書斎に向かったんです。そしたらもう既に居なくて…。外に居た兵士の方に聞いたら、王の元にいったと言われ、王の執務室に向かったんです。…ですが誰も居なくて…。てっきり部屋に戻ったのかと思い部屋に向かいました。でも部屋にも居なくて…兄さん、どうしよう…!」

切羽詰まり、泣き出しそうなミズホ。
…クイエートが、いない…?
おかしい…これは、何かある。
王の元に行った…?いや違う、これはおかしい。
じゃあ、どこに…?

「レンヤ兄、どうするの?」
「…探しに行ってまいります。…二人は、此処に行って、出ていく準備をしておいて下さい。」

メモ帳に簡単な地図を書き、手渡す。

「え、出ていくってどういう…。」
「それはルナ様に聞いてくれ。…では、私は失礼します。」

状況が把握出来ていないミズホを置いて、ルナ様の部屋から出る。
そして心当たりのある場所へと、手当たり次第探し回る。

「クイエート…。」

こんなに走り回ったのは、出会ったばかりの頃以来だった。
あの頃は、クイエートは誰も信じず、俺が傍にいることすら嫌がった。
だから、直ぐにどこかに行ってしまって、探すのに苦労したものだ。
…最初こそ、俺も自分の目的の為にクイエートに近付くつもりだった。
でも、何時しか惹かれていた。
必死に王子としての役割を果たそうと頑張る姿、兄として妹を守ろうとする姿、弱い所を誰にも見せず強がって夜一人で泣いている姿、そして、何時しか見せてくれるようになった安心したような柔らかい微笑みに、俺は堕ちたのだろう。
そして何時しか護りたい、大切な人になった。
…俺は今でも王族は嫌いだ。
大切な人を奪ったから。
それでも俺は、ここにいる。
全てはクイエートの為に。

「…全く、どこにいるんですか、貴方は…!」

クイエートが居なければ、俺はここに留まる理由はない。
それなのに、貴方はなぜ俺に何も言わずに消える…?

「ほんと、手のかかる人だ!」

でもまあ、貴方がどこに居ようが関係ない。
必ず探し出す。
…待ってて下さいね。


[ 8/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -