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9月拍手(野坂、西蔭、なえ)

■夕暮れの帰り道(野坂)
「−−−よし、今日の練習は終了!
各自、ダウンをしっかりして体を休める様に。お疲れ様」
「「「お疲れ様でしたーっ」」」



「(…用具整理した、部誌書いた、戸締りした、…)うん、OKな筈」
「名前、他にやる事があれば手伝うよ」
「野坂君。ありがとう、でも大丈夫。丁度終わったよ」
「そう、手際が良くて助かるよ」
「いや、そんな事は…!あれ、そう言えば西蔭君一緒じゃないんだね?」
「一星君が編入してきたからね、今日は彼の案内さ。
輪番制で王帝を紹介するって話をミーティングでしただろう、あれだよ」
「そっか、もう西蔭君の番なんだね。私はいつかな〜」
「…名前は僕と彼の3人の予定だよ。皆が案内した所を聞いて不十分な所を回ろうかなと思ってる」
「わぁ、もう考えてくれているんだね!キャプテンの仕事色々あるのにゴメン!
それこそ私が手伝わなきゃいけないね」
「良いんだ、普段あまりやらない事だから新鮮で楽しいよ。
それより、まだ暑いとはいえ9月。暗くなるのが早くなってくる時期だ。
…用事がないならそろそろ帰ろうか」
「あ、そうだね…!確かに、何だか同じ時間でも暗くなるのが早くなってくる気がするね…」
「文豪達ならこの夕焼け空をどんな風に言葉にするんだろうね」
「野坂君は言う事が知的だなぁ…。私はぼんやり綺麗な赤紫のグラデーション、ぐらいしか浮かばないもん」
「何かを感じるという事が大事なんだと思うよ。僕は名前の様に浮かびすらしない。
他には何か思う?」
「えー…。うーん、夕暮れが早くなるとちょっと寂しいかな?」
「物悲しいってやつかな?」
「そんな難しい感じじゃなくて、単純に部活の後こうやって野坂君や部の皆と話す時間が短くなっちゃって残念って言うか…つまんない、が近いかな?」
「…! ふふ、可愛い事を言ってくれるね。
でも確かに、僕らは寮だし帰り道に話す時間も無いに等しいか」
「ね。そう考えると私達ってコミュニケーション不足なのかも」
「成程ね。それはサッカーのチームプレーにおいて解決すべき重要な問題だ。
一星君もだけど、部員同士でもっと交流する機会が増えたら良いかな」
「賛成!じゃあ今度、皆で学外に遊びに行こ―!」
「妙案だね。早速明日、皆に希望を聞いてみようか」
「そうしようそうしよう!楽しみだな〜」
「僕もだよ。…と、もう寮の前か。有意義な時間はあっという間って所かな。
じゃあね名前、お疲れ様。また明日も宜しくね」
「うん、野坂君もお疲れ様!こちらこそ宜しくね!」


■食欲の秋(西蔭)
「(もう10月か…。サツマイモとか、栗とか、南瓜とか…好物がいっぱい…。
あぁ、駅前のカフェの新作スイーツ、とっても綺麗だったな…)」
「…名字」
「(街角のご飯屋さん、テイクアウト始めたんだよね…。
あそこ定食美味しいからな〜…お弁当、何が入ってるんだろう…気になる)」
「おい、名字」
「っあ!!?はい!ゴメンね西蔭君、ぼーっとしてた!
何だろう?」
「ぼーっとと言うか…悩み抜いていたような表情だったが。大丈夫か」
「そんな難しい顔してた?心配かけてゴメンね、全然悩んでないよ!
秋だからか食べ物が端から端まで美味しそうに見えて困ってたと言うか…」
「食い物の事か…そう言えば、お前見かけによらずよく食べるな」
「うっ…!…いや、そうだね…。自分でも結構この食欲には手を焼いてると言うか…。
動いてるから太りこそしないけど、人と食べに行くの、ちょっと恥ずかしいんよね…」
「…」
「かといってお腹は空くし、でも一人で食べ歩くのも余計にハードル高いと言うか。
困っちゃうね、あはは…。
うーん、もうちょっと…せめて普通の女の子くらいの食欲にならないかなぁ」
「…別に、食べられないより食べられた方が良いんじゃないか。
それこそスポーツしている人間が食べなかったら体ができ上がらないだろうが」
「…そっかな…。−−−うん、そう思う方が良いよね。
フォローありがとう西蔭君」
「別にフォローしてるつもりもないけどな…。
個人には個人の適量がある、それだけの事だ」
「はぁい先生。もうあんまり気にしない事にしまーす」
「誰が先生だ」
「へへへ、言葉の綾ってヤツだよ!
それよりさ、もしよかったら西蔭君、今度一緒に何か食べに行こうよ!
美味しいお店沢山紹介するよ!野坂さんも誘う?
ほら、私がよく食べるの知ってる人の方が気兼ねなく食べられるしー」
「…まぁ、別段断る理由もないが」



「−−−名字と食べ歩き?良いね、行っておいでよ」
「は…、野坂さんは行かないんですか」
「さしもの僕でもデートを邪魔するなんて野暮はしないよ」
「デートではないですね」
「(あれ、無自覚か)そう、じゃあもし都合が付いたら合流しようかな。
ところで名字って、食べてる時リスみたいで可愛いよね」
「は…??」
「幸せそうだし、こっちの気も緩むって言うか。見てて飽きないから楽しみだなぁ」
(もやっ)「…、…そう、ですね…」



「…名字」
「うん?なぁに西蔭君」
「…今度、野坂さんと食べ歩く前に俺とお前で下見に行くぞ。
野坂さんにいい加減なものは食べさせられないからな…」
「う、うん?分かった…(何か凄い気合入ってるな…?)」


■中秋の名月(白兎屋なえ)
「今日は皆でお月見やー!」
「しねぇよ、んな遅くまで学校に残ったらお目玉だろうが」
「もう、アツヤは情緒が無いんやね。
名前は快ーくOK出してくれたんに!ねーっ名前!」
「快くかどうかは忘れたけど『鑑月なんて素敵だね』とは言ったかな」
「おい名前、お前が甘やかすからコイツの突飛な我儘がどんどんエスカレートしていくじゃねぇか…」
「まぁ、結束を深めるって意味ではこういうイベントするのは無駄って訳ではないし。
十五夜って満月じゃない事もあるとか聞くけど、昨日の夜も惜しい感じの円だったし、今日は真ん丸で綺麗なんじゃないかな」
「月の形なんか気にしねえし…お前よく見てんなぁ」
「名前は風流なんよ。なぁなぁ、勿論 月見団子はあるんやんな!?」
「お前っ月見より食い物じゃねーか!俺の事をどうこう言える立場か!」
「まぁまぁ…団子は作ってくるから、その間しっかり部活集中してね?」
「はーい!」
「名前!お前、本当 白兎屋に甘すぎ!!」
「ちゃうよ、アツヤがウチに厳しすぎるんよ」
「俺は普通だ普通!お前ちやほやされ過ぎて感覚狂ってんじゃねーの!?」
「うーん…。…アツヤ君」
「あ?」
「十五夜は豊作を願ったり穫れた作物に感謝する意味のあるものだし、結構重要な行事じゃない?
とか言って、私は今まであんまりちゃんとやった事ないからこれを機にどんなものか体験してみたいなって」
「…そりゃ、俺もそんな意味あるって考えながら団子食った事なんかねぇけどよ…」
「それに旧暦と新暦ってズレてるのに、たまたま姫が新暦の十五夜ドンピシャに月見しようって言ったのはもう、皆と交流するきっかけとして受け入れたらいいんじゃないかな?」
「…くそ、分かったよ!お前口上手いよな全く!!」
「姫も。良いなーって私は言ったけど、本来はアツヤ君が正しい事言ってるよ。
まぁ、暗くなるのが早いからそこまで遅く学校に残らないでも良いかも知れないけど。
許可を取りに行く手間があった事や監督に迷惑かかるって事は分かっていてね」
「ぶー…」
「肯定するだけじゃなくて注意してくれる仲間がいるの大切な事だから、アツヤ君の言ってる事にも耳を傾けてね?」
「…はぁい…」
「ざまぁ」
「何なん!これは注意でも何でもないやんね!?
「はーい、喧嘩しないで下さーい」

「名前ちゃんがサッカー部にいてくれて、本当に助かるなぁ。
染岡君もそう思うでしょ?」
「潤滑油みたいなやつは何処にでもいるもんだな。
さ、そろそろ練習始めるぞ」
「そうだね」

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