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ポッキーコラボ(豪炎寺、風丸、鬼道)

■豪炎寺

「しゅーやくーん」
「? あぁ、お前か」
「私です〜。今日も練習お疲れ様」


帰り道、久々に幼馴染にあった。
珍しくコンビニの袋をぶら下げていて、薄いビニールから透けるのは
四角く縁取られた赤色。菓子だろうか。


「どうしたの?…あぁ、これ?ポッキーだよ。お腹空いてる?いる?」
「いや、いい。甘い物食べないお前が買うなんて、よっぽど食べたかったんだろ」
「いや、そんなに…3箱一気には食べないし」


じゃあ何で買ったのか。しかも取り出して見せられると全部チョコレートコーティングのものだった。


「コンビニ入ったのはたまたまだったけど、この赤色が目について。
修也君を思い出してさ〜」
「俺を?」
「雷門から木戸川に学校変わってから、なかなか会えないからね。
ファンとしては代わりの物が欲しい訳ですよ」


相変わらずこっちの気も知らないで、調子の良い事言ってくれる奴だな…都合良く勘違いするだろ。


「お前、俺のファンだったのか?」
「意地悪な言い方してくれるねぇ…離れてから気づく事もあるじゃない〜。
…本当はプレカ欲しいけどくじ運ないから、赤い何かが修也君の代わりだよ」
「俺の代わりになら尚更、簡単に譲ろうとするのはどうなんだ…」
「本人にだったらセーフかなと。修也君だから特別ね」
「…っ…」



そう屈託なく笑うのを見ると、何も言えなくなる。本当に昔からズルい奴だ。



「…今日、これから時間あるか」
「?うん」
「サンプルで貰ったプレカが家にあるから、取ってくる。
お前にやるから近くで待ってろ」
「えっ…嬉しいけど、私だけ特別は悪いよ…皆死にものぐるいで手に入れるのに」



特別だからお前に持ってて欲しいんだろ。
そう言ったらお前は、どんな反応をしてくれるんだろうか。



■風丸

「風丸君!ゴメンね、お待たせ〜」
「いや、大丈夫だ。帰ろう」


帝国スタジアムでの練習後。
雷門から一緒に派遣されて来た彼女と登下校するのにも、随分慣れて来た。

激しい練習の合間、この時間だけは心が凪いだ。


「あのね、風丸君。良かったらコレ食べない?」
「ポッキー?懐かしいな、小さい頃はよく食べたよ。
…でも何か、箱変わったな?」
「私も思った、昔はもっとシンプルだった気がするね」


手渡された箱は緑を基調にハワイアンテイストのデザインだった。
ココナッツ味らしいが、生憎そんな洒落た物は食べた事がないので想像がつかない。


「これ、ココナッツオイルも使われてるんだよ。
中鎖脂肪酸って言う脂肪が沢山あって、エネルギーになりやすいんだって」


一口食べると独特な風味が広がった。なかなか美味しい、と思う。
そう告げれば隣の彼女は優しく笑った。


「詳しいな」
「強化委員 頑張ってる風丸君に、少しでも元気になって欲しいから…何か力になれる事無いかなって、最近勉強してるの。成果が出たね」
「…っ」


それを聞いて、俺は思わず彼女を抱きしめていた。
自分だって慣れない環境で疲れてるだろうに、俺の事を優先して考えてくれる。



「か、風丸君…っ」
「ありがとう、お前の応援が俺にとって…一番力になるんだ」


赤い顔で「…うん。これからも沢山、応援するね」と言った彼女の言葉は、肩口からあっという間に俺に融けた。



■鬼道


細かめに砕かれた氷に数種類のポッキーが入れられると、器になったシャンパングラスがシャラ、と上品な音を立てる。


「ポッキーがここまで高級そうに見える日が来るとは思わなかったな。何でも工夫次第という事か…」
「いや、鬼道君…あんまり凝視されると恥ずかしいんだけど。普段は、庶民のお菓子しか我が家にはないですよー。連絡くれたらケーキとか買ってきたのにさ」


そういってコースターを敷いてレモンの浮いたアイスティーを出してくれる。


「と言うか鬼道君ってポッキー知ってたんだねぇ」
「お前は俺を何だと思ってるんだ…小さい頃は春奈とよく食べた」
「そうなんだ…春ちゃん、苺味とか好きそうだね」
「ポッキーの日にポッキーゲーム…最近はポッキーダンスとやらもあるらしいな。別に食べなくても一般的に知れ渡ってるだろう」


冷えたナッツチョココーティングのポッキーを口に含めばポキっと小気味良い音が鳴る。向かいは何味を選んだのかと見てみれば、何やら固まっていた。


「…おい」
「あ、ごめん。鬼道君の口からポッキーゲームなんて俗っぽい言葉を聞いたのが衝撃的過ぎて…」


誤魔化すように薄い茶色のポッキーを口に突っ込んだのを見ると、俺を何だと思ってるんだともう一度言いたくなる。

失礼な事を考える奴は少しイジメてやろうか。


「俺とやるか?ポッキーゲーム」
「っ!ごほ…っ!」


不意打ちでパキリと折れてしまったポッキーはアイスティーの中に墜落した。
どうやら、ゲームを始める前から俺の勝ちのようだった。



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