「で、君はさっきから何してるのさ」
「見て分からない?」
「無い胸を必死に俺に押し付けて健気というか何というか…」
「うるさいよ!」


最近、臨也が忙しいやら何やらで会えてなかった。どうせまた何か良からぬことを企んで新宿の街をマンションの上から眺めて嘲笑しているんだろう。やっぱり臨也は頭のネジが一本どころか10本はぶっ飛んでる。そんな奴を好きな私も私だが。

だから、臨也から久しぶりに電話があって、私はそれはもうその場で飛び跳ねてしまいそうなぐらいには嬉しかったのだ。なのに臨也の家に来てみたらまた仕事だ。いつものデスクトップでなくソファでしてくれてるだけマシなのだろうか。

どさりとそこら辺に鞄を放って臨也の隣に座る。高級感のあるソファが少し沈んでその反動に臨也が少し揺れる。
そのまま腕にくっついてみる。なんの反応もなし。胸を押し付けてみても特に反応はなし。試行錯誤している内に冒頭の臨也の台詞だ。こいつは本当に付いているのだろうか。


「臨也って本当に男なの?それともそれは不能なの?」
「おいおい変なこと言わないでくれるかな。俺は生物学上男だし、不能でもない。それは君が一番理解しているじゃないか」
「じゃあ、なんで?」
「なんで?愚問だね。随分と自己評価が高いようだけど、もう少し色気とか胸とか付けてから言ったら?」
「まだ言うか!」
「あと、俺、仕事邪魔されるの好きじゃないよ」
「う、」


それだけ言うとまた臨也はパソコンの画面に視線を戻した。にやにやと楽しそうに口元を歪めている。何がそんなに楽しいかは知らないが自分から電話しておいて何て男だろう。このネカマめ!

どうしてこんな男を好きになってしまったのか。何度自問自答してみたところで、答えは出ないのだ。どうしてなんて理由はない。私は折原臨也という男が好きなのだ。


プルルルルと電話が鳴り、臨也の視線が画面からデスクトップの上の携帯電話へと移る。憎たらしい。あんなコール音に私は負けているのか。

ええ、分かってますよ。はいーー

いつもと違う臨也の流暢な対応の声を聞きながら、試しに臨也の名前を呼ぶ。


「いざや」
「ええ、大丈夫ですよ。あの件でしたら金曜日に……はい」
「いざやあ…」
「…」


うるさいとでも言わんばかりの冷たい視線が突き刺さる。そんなに怒らなくてもいいのに。不貞腐れてぐてーとソファーに横になり嫌なくらいもふもふなクッションに顔を押し付けた。くそう臨也の匂いがする。

ごろりと寝返りを打とうとしたけれど、それは臨也が私の上に跨ってきたせいで叶わなかった。てか、いつの間に。


「なに」
「そんなに不貞腐れるなよ」
「臨也のせいじゃん」
「機嫌直してって」
「さっきはノリ気じゃなかったのに…」


臨也は私の首元に顔を埋めて、手は太腿を行ったり来たり。どうやらもうやる気満々のようだ。いきなりの展開に若干まごついていると、臨也は私の顔を見て、はあとため息を漏らし、高揚した表情を見せた。何だか珍しい。いつもはどこか余裕ぶって、あまりこういう顔しないのに。


「どうしたの…?」
「……君と同じで俺も随分とたまってたみたいだ」
「へえ…」
「なまえのくせに変に可愛いことするから…」
「興奮した?」
「俺も男だからね。好きな女の子にあんな風に名前呼ばれたら興奮だってするよ」



臨也の性事情は知らないが、彼がいつもより冷静さに欠け、気持ちが高揚しているのは見て取れた。あんな視線を寄越しておきながらこの男も興奮していたのか。

それだけ言うとまた臨也は私の首元に顔を埋めた。なんだかんだ言って臨也も私に弱い。
無駄にさらさらとした臨也の髪が首筋を掠めて擽ったいがまあ我慢してやろう。だんだんと身体中に回る茹だるような熱に身を任せた。

臨也が私に弱いように私も臨也に弱いのだ。



150124

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