日直の仕事は面倒だ。何でもかんでも日直だからという理由で押し付けられるし、黒板消しに宿題の回収、日誌などなど仕事が多い。しかも、もう一人の日直の子が早々帰ってしまい日誌を私一人でやる羽目になってしまった。強く言えない私も悪いのだが。


はあとため息と同時に教室のドアが開いた。パッと顔をあげればおそらく部活中だったんだろう汗を流す月島君の姿。何だか珍しいなと彼を見る。月島君は私と目が合うと机の上の日誌を見て「押し付けられたの?」とこちらに向かって歩いた。


「別に押し付けられたわけじゃ…」
「へえ?もう一人の日直見当たらないけど」
「……月島君練習中なんじゃないの?早く戻んなくていいの?」
「今は休憩時間だから」


私の精一杯の嫌味も軽々と躱して彼はロッカーを開けてタオルを取り出すと汗を拭う。練習着に少し蒸気した頬。
なんか変な感じ。それにすごく、色っぽい。

ちらりと月島君の目が私を捕らえる。どきりと心臓が跳ねた。月島君に何もかも見透かされてるみたいで、あの眼鏡は私の邪なところまで読むことができるような気がする。
小首を傾げて月島君の唇が弧を描く。


「なに?見惚れでもした?」
「は、はぁ!?そ、そんなわけ…っ!」
「…なに赤くなってんの?図星なの?」
「なってないし!図星じゃないし!」


赤くなった顔を手で隠す。月島君と話してると調子が狂う。日誌の続きを書いていると、月島君がドアに向かう。もう行ってしまうのだろうか。


「もう練習に戻るの?」
「早く戻れって言ったの君じゃん」
「そんなこと言ってない!」
「似たようなもんデショ。それともなに。僕が戻ったら何かあるわけ?」
「う、……別にないんだけど…」


1人で放課後の教室にいるのはやっぱり少しつらいというか。寂しい、小さく呟いたそれにため息を大袈裟についた月島君にびくりと体が跳ねた。
彼女でも無いのにこんなこと言うなんて、面倒な奴だって思われちゃったかな。つかつかとこっちに戻ってきた月島君に顔を下に向ける。

かたんと机が揺れて、視線を向ければ月島君のごつごつとした手。顔を上げると月島君の顔がすぐそこにあって、あまりにも近いその距離に引いてた熱が全身にまわる。


「本当さ、なんなの君」
「な、なんなのと言われましても…」
「君を見てるとめっちゃくちゃにしたくなる」
「っ…」
「だから、…そういう可愛いこと言わないで」


そう呟くように月島君は言うとするりと私の頬に指を滑らせて、おでこに優しく唇を落とした。
体まで真っ赤になってるんじゃないかってぐらい熱くて、硬直したまま動けない。


「次はこれだけじゃ終わらないからね」


そう言って教室を出て行った彼の後ろ姿を黙って見つめることしかできなかった。彼がわからない。


日誌をなんとか書き終わって職員室に向かう。まだ月島君の唇の感触が残ってる。おでこにそっと触れる。月島君の唇、柔らかいんだなぁ…そこまで呟いてはたと立ち止まる。自分は何言ってんだ!途端に恥ずかしくなって顔を覆った。
月島君のあの時の顔が忘れられない。もしもこれが月島君の策略だったのだとしたら、効果は抜群である。明日会ったら今日のこと月島君に問い詰めてやろう。だって、私は今月島君のことが気になって仕方がないのだから。



150119

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