研磨のプリン頭をじっと見つめる。てっぺんの黒いとこをただひたすら見つめる。この動作を始めてさて何時間が経つのか。そろそろ研磨に触りたい。ちょこっとならいいよね。そっと丸くなったその背中に手を伸ばした。
「今はだめ」
「えっ」
「今ラスボスと闘ってるから」
「あとどのくらい?」
「あとちょっとでセーブポイントだからそこまで」
「はやくやっつけちゃってね」
「うん」
あと数センチの距離だったのに、なんで触れようとしたのが分かったんだろう。研磨は背中にも目がついてるのかもしれない。
渋々と引っ込めた手が行き場を無くしてそわそわ。はやく触りたい。ぎゅってしたい。ベッドの上でまた研磨のプリン頭を見つめる。研磨って焦らすから、待ってる時間も苦ではないけれど、やっぱりちょっと寂しい、なんて。
ザシュと鈍い音とラスボスの呻き声だけが部屋に響く。やけにリアルなその音とその画面に研磨は夢中。
そんな画面じゃなくて私を見てよ、なんてゲームにちょっと嫉妬してみたり。
早く死なないかなぁラスボス。
「なに?」
「えっ?」
「服、伸びるからあんまり引っ張らないで」
「え、あ、ごめん…無意識」
「……」
研磨の服を無意識に引っ張っていたようで、研磨は怪訝そうにこっちを見た。
ゲームの邪魔をしてしまって申し訳ない。もう一度、ごめんねとだけ言うと研磨がのそりと動いた。ぽすんと携帯がベッドに投げられる。それを惚けて見つめていると、ぎしりとベッドが揺れた。
研磨は私の隣に座ると私の手にそっと手を重ねた。じんわりと研磨の温もりが伝わってくる。
首を傾げて研磨を見つめると、ちらりと研磨も一瞬こちらを見た。
「もう、ゲームはいいの?」
「うん。なまえの方を優先すべきかなって」
「べつにゲームが終わってからでも良かったのに…」
「…本当に?」
「うっ……」
「なまえのそういう正直なところ、俺は好き」
えっと声を上げると、研磨は優しく私を抱き締めた。研磨の匂いが鼻を掠めて、私の首を研磨の髪が擽った。
どきどきと胸が鳴って、空っぽだった胸がいっぱいに満たされていく。
きっと今研磨の顔は林檎みたく赤いんだろう。それを見られたくなくて、照れ隠しで抱き締められたわけだけど。可愛いなぁもう。胸キュンってこういうことを言うんだろうなぁ。
「研磨さん、研磨さん?そろそろお顔が見たいです」
「…なまえ、うるさい」
「ね、研磨」
「…なに」
「…私もね、……大好き」
「………うん」
たまに甘いのも悪くないな、先ほどよりも強く抱き締められるのを感じながらそんなことを思った。
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