「暑い」

たった一言。俺の部屋に来るや否や、それは俺に向けたわけでもなくただ呟くように言うと、俺のベッドに突っ伏した。ちょっとそれ夜、俺が寝るんですけど。あーあ、そんなにぐちゃぐちゃにして。


「なまえあんまり暴れないでよ」
「真琴の部屋あんまり涼しくない」
「ん、さっき付けたばかりだからね」
「んもうなにやってんのー」
「あーだから暴れないでって」


手足をバタバタとまるで陸の上の魚みたいな、ちょっとそれは可哀想か。シーツがどんどんヨレヨレになっていく。

そんなことするから短すぎるショートパンツは肌を隠す意味をなしていない。だから、いつももっと長いの穿けって言ってるのに。どんなことになっても、知らないよ?って。本当に分かってるのかな。俺だって思春期真っ盛りの男なんだけど。



「もっと冷房強くしてー」
「だーめ。26度で十分です」
「暑いよぉ私の部屋クーラー壊れてるから真琴の家まで来てるのにこれじゃあ意味ないじゃん」
「まだ直らないの?」
「う、ん。なんかうちの古いらしくて新しいのに変えるかーって話になってる」
「良かったじゃん。これで俺の部屋に来る理由も無くなって、暑い部屋ともおさらばできるわけだ」
「そうだけど…?」


じとっとした目で俺の方を睨みつけるなまえはそれが上目遣いになってることなんて絶対に気付いてない。
俺がなまえに詰め寄るようにベッドに上がるとぎしっと音を立てるのがやけに卑猥に感じられた。

俺の変化に気付いたのか、真琴?と俺の名前を不安気に呼び後ずさった。それすら今の俺には興奮材料にしかならない。意味が分からないと困惑の眼差しで俺を見つめるなまえにたまらない気持ちになる。



「ねえ、どうしてなまえはわざわざ俺ん家に来るの?」
「だ、だから私の部屋のクーラーが壊れてるから…」
「でも、他の部屋のは壊れてないんでしょ?」
「そ、だけど…」
「それに俺の家よりハルの家の方が近いよね?」


ぐっと声を詰まらせたなまえは俺の方を睨みつけた。そんなの逆に俺を煽るだけなんだって。壁まで追い詰めて、なまえの腕を掴んだ。

頬をうっすら赤く染めたなまえは俺を見上げてもう一度真琴と俺の名前を呼んだ。


「こんな、短いの穿いちゃってさ、」
「っ、あ…」
「誘ってるの?」
「…っ、」


真っ白な太ももをするりと撫でてやると、顔を真っ赤にしたなまえはこくりと小さく頷いた。もう一度言う。頷いたのだ。
俺は驚きすぎて、目を見開きなまえをジッと見る。すると、恥ずかしそうになまえは俺から目をそらした。うわ、今のなんかエロい。


「ただ真琴の部屋に遊びに来る口実が欲しかっただけで、本当はとっくにクーラーなんか直ってるし」
「え、ええっ?」
「わざと短いショートパンツも穿いてたの」
「う、そ…そうなの…?」


また小さく頷いたなまえは今度こそ顔を隠すように俯いた。

ということは、無自覚だと思っていた行動も全て狙ってのことだったということで、俺はまんまと彼女の手の上で転がされていたということで。
俺めっちゃ恥ずかしいんだけど!!!

熱くなる頬を片手で隠してなまえから視線を外す。ていうか、なまえ可愛すぎでしょ。赤くなる頬ににやける口元を隠しているとくいっと控えめに裾を引っ張られた。
この部屋にはなまえと俺しかいないわけだから、犯人はなまえなわけだけれど。

視線をなまえの方へ寄越すと少し潤んだ瞳で俺のことを見つめる。


「もう、続きしてくれないの…?」


くらりと目眩がしたのは暑さのせいだけじゃない。絶対に。



140727


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