これは噂に聞く倦怠期というやつなのだろうか。
最近、黒子くんが構ってくれない。いや、前からあまり構ってくれなかったけど、それでも今よりは断然構ってくれていた。なのに、最近は話しかけてもそっけないし、なんか避けられてる気もするし、これはやっぱり倦怠期なのかな。
「ねぇ、どう思う?かがみん」
「知らねぇよ何で俺に聞くんだ」
「だって、こんなことかがみんぐらいしか相談出来ないし……」
「お前友達いないのな」
「違いますからね。断じてそんなことはないからね。って、話逸らさないでよ、もう!私真剣に悩んでるんだけど!」
「あー、ったく、めんどくせぇ奴らだな」
何でお前も俺に……なんてぼやいてるかがみんに私はクリームパンを一つ渡す。今日の昼ごはんの一つだったんだけど、まあ、致し方ない。クリームパンで私と黒子くんの関係が戻るのなら安いものだ。……それもそれでちょっと良く無いけど。
「とりあえず、だな…これを、もぐもぐ、聞け…もぐもぐ」
「食べてから話しなよ」
「爆笑もんだぜこれ」
そう言ってかがみんはなにやらiPhoneを操作し、私の前に突き出した。何かの録音みたいだ。これが何の関係があるのか不思議に思ったが、かがみんからiPhoneを受け取り再生ボタンを押した。
『火神くん。僕はどうしたらいいんでしょう……』
『さぁ?爆発すれば?』
『僕は真剣に悩んでるんですよ』
これ、黒子くんとかがみんの声、だよね。黒子くんがかがみんに何かの相談してるみたいだけど……てか、かがみんの黒子くんへの対応酷くない?爆発すればって、なに。答えになってないよ。
『彼女のことがもう可愛くて可愛くて!!理性が保てそうにありません!!どうしたらいいんですか!!?』
「ええええええええ!?!??!」
「ブフォ」
『最近すぐ抱き付いてくるんですけど、もう僕は耐えられそうにありません。ああ、もう可愛い……』
『お前ほんと毎日毎日さぁ……それちゃんと本人に伝えてんの?』
『言えるわけないじゃないですか。僕を何だと思ってるんです?』
『ヘタレチキンツンデレ』
『……否定出来ないですね』
そこで私は一旦停止ボタンを押した。かがみんはプルプル震えて机に突っ伏している。ちょっと状況が理解出来ない。これは本当に黒子くんなのか?そう思ってしまう私はきっと正常だ。
『黒子くん、黒子くんって、すぐに僕の所へ来て楽しそうに笑うんです。その姿はもう天使ですね』
『お前本当気持ち悪いよ』
『あぁ、出来ることなら今すぐ抱き締めたい……』
「………」
『お前らキスもしてねぇんだろ?お前よくそんなんで我慢できてんな』
『したいですよ。僕だって。我慢の限界ってものがありますから』
「………」
『何で俺の前だとそんなに素直なのに、あいつの前だとあーなるわけ?』
『ツンデレ舐めないでください』
『何でそんな偉そうなんだよ』
『はぁ…ほんと好きだ……』
「かがみんもう止めて……」
「これのどこが倦怠期だって?」
「もうほんと恥ずかし……」
顔がこれでもかと言うほど熱い。こんな、まだ信じられないくらいだ。かがみんは今だに机をバンバン叩きながらヒィヒィ言ってるけど、てかそんな笑う要素ないでしょ。
かがみんの背中に手を伸ばした時、後ろからとてもとても低い声が響いた。
「火神くん…何、やってるんですか……?」
「ひっ…!?」
「黒子くんっ!?」
「君という人は!!!信じられません!!!」
「あ、ああああれだあれ!!とりあえず落ち着け黒子!!」
「これを!どうやって落ち着けられると!?」
恥ずかしさからか、それとも怒りからか、顔をさっきの私みたいにこれでもかと言うほど赤くした黒子くん。きっと、どっちもなんだろう。キッとこちらを睨んだ黒子くんはいつもと違って全然怖くなくて、寧ろ可愛くも思えた。
「ねえ、黒子くん。私のこと好き?」
「は、」
「私はね、黒子くんのこと大好きだよ!」
「っ、…僕だって、大好きですよ!好きで好きで大好きで!言葉に出来ないくらい好きなんです!!」
ああ、馬鹿だなぁ私。倦怠期とか、あるわけないじゃん。こんなに黒子くんは私のこと好きだって、大好きだって、言ってくれてるのに。
真っ赤な顔で俯く黒子くんの手首を掴む。驚いて顔を上げた黒子くんの唇に思いっきりちゅーしてやった。
彼氏の黒子くんはツンデレです(初ちゅー編)