いまだに頬の熱に煩い鼓動。これじゃあまるで私が銀さんを……


「好きなんじゃない?」
「ありえない!」
「執事に恋するってなんかすーてーきー」
「恋って柄じゃないよ」
「たしかにね」
「おい」


失礼なことしれっと言いやがった。私たち親友だろー!?


「伝えなよ。なまえの素直な気持ち」
「なんで上から目線?あのね、相手は銀さんだよ?あんたも見たことあるでしょ?」
「あー…でもカッコよかったよ?」
「………たしかにカッコいい…かも」


それを聞いてにまにまと気持ち悪い笑みを浮かべながらこちらを見てくる友達を見て見ぬふりをして私はストローをくわえた。


「あれ?あんたさ、いちご牛乳好きだっけ?」
「…………」


ちゅーと音をたてて甘ったるいのが喉に通る。

もう手遅れのようだ。




下校時間になると校門の前には生徒たちで溢れかえる。まあその中でも銀さんをすぐ見つけましたけどね。


「銀さんの天パってこういう時は便利よね」
「なんだとコラ」


頬引っ張られて赤くなったとこをさすりながら銀さんを見る。そんなことが言いたいんじゃない。何で素直になれないの。


「………ちょ、なに?」
「…………」
「返事しろー」


また頬引っ張られた。腫れたらどーすんだ。てか、何で普通なの。昨日キスしたじゃん。こんなに私は銀さんのことで頭いっぱいなのに。


「銀さんのせいだ」
「へ?」
「今日1日銀さんのことで頭いっぱいだったの。授業も集中できなくて、帰りが楽しみで仕方なくて」
「………」
「こんななった責任とればか」


頬が熱いのは引っ張られたからだ。きっとそうだ。


「顔真っ赤」
「銀さんもね」


これはアレだ寒いから、なんてわざとらしく手に息を吐く銀さんがなんだか可愛らしく見えた。


「あー今日は寝かせないよ?銀さん我慢してたんだから、もう限界」
「…………いいよ」
「えっ」
「しよっか、昨日の続き」
「だー!何でそういう……」


そう言った時の銀さんは耳まで真っ赤で、私もつられて赤面。


「泣いてもぜってー止めてやんないから」


耳元でそう囁いた銀さんの声はいつもより少し低くてギラギラしたその目に男なんだってぞくっとした。

私はとんでもない人を好きになったのかもしれない。




おかえりなさいませお嬢様

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