「なまえさん」
「怜くん」


眼鏡を押し上げて照れた様にそっぽを向いて、行きましょうかと手を差し出した彼に胸きゅん。
海辺を手を繋ぎ歩く私達は傍から見たらちゃんと恋人同士に見えているんだろうか。ぎゅっと少し手に力を入れると握り返してくれた。そんな些細なことにもきゅんとしてしまう。


「暑いねぇ溶けちゃいそう」
「今日は最高気温39℃ですしね」
「え〜焼けちゃうよヤダなぁ。そういえば怜くん焼けたね」
「え、そうですか?」
「うんうん。ゴーグル焼けしてる」
「えっ!?」
「うっそ〜〜〜」
「へ…?…、吃驚したでしょう!!」



豆鉄砲を食らったような顔をした怜くんに吹き出すると、ぷんぷん怒りながら冗談は苦手ですとそっぽを向いてしまった。ほんといい反応してくれる。
さっきの顔を思い出してまた吹き出して案の定怜くんに怒鳴られた。


* * *

「じゃーーーーん!」
「………、」
「どう?似合う?おニューの水着だよっ」
「………」
「ちょっと、何か言ってよ」
「…いえ、あの…目のやり場に困る、というか…」


とても似合ってます、と小さな小さな声で呟いたのを聞いて頬が緩んだ。

怜くんはきっと黒とか青とかそういうセクシーなの嫌いそうだから白に水色のフリルがあしらった清楚なビキニにしたのだ。
これ着るために私がどれだけ努力したことか………。


海だ!海だ!とハシャぐ私とは反対に怜くんはしっかりと準備運動をしなくてはとその場でストレッチを始めた。お、おう…何か恥ずかしいぞ。
とりあえず私は鞄から日焼け止めを取り出した。日焼けは乙女の大敵だからね。しっかり塗らなきゃ!念入りに塗っているとふと面白いことを思いついた。


「ねー、怜くん」
「何ですか?」
「背中、塗って?」


カシャカシャと日焼け止めを軽く振りながら言えばぽかんとした後すぐに真っ赤になった。ぷるぷる震えだして、予想通りの反応に笑い転げているとスッと手から日焼け止めが消えた。
消えたというよりも取られた。もちろん怜くんに。


「え、……怜くん?」
「いいでしょう。塗って差し上げます」
「は、えっ、いいよ別に!自分で塗るから!」
「自分では届かないでしょう?さあ、寝てください」


ニコリと笑顔を浮かべる怜くんに顔が引きつった。まずい。相当怒らせてしまったようだ。ほら早く、と腕を引かれ渋々レジャーシートの上に寝そべる。


たらりと日焼け止めが垂らされて、怜くんの手が背中の上を滑る。ただ、日焼け止めを塗ってるだけなのに手つきがいやらしく感じて早く終わることを願いながら手をぎゅっと握り締めた。
怜くんの手が腰のあたりに触れた瞬間ぴくりと反応してしまって顔が熱くなるのを感じた。上からくすくすと笑う声が聞こえてもう恥ずかしくても死にそうだ。


「終わりましたよ」
「あ、りがと」
「顔赤いですけど、どうかしました?」
「………怜くんのイジワル」
「僕をからかうからこうなるんです」


ドヤ顔の怜くん可愛い、じゃなくて。
もう怜くんをからかうのは止めようと思いましたまる。



君色アイロニー

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