土方先生のつまらない授業中、窓の外をぼーっと見ていた。雨がしとしとと降っている。あらら降ってきた。傘持ってきてねーよ、どーしよ。後で借りに行くか、なんて考えてたら土方先生に頭叩かれた。もの凄い力で。少しは手加減しろよ!


「え、もう無いんですか」
「今日は傘を借りにくる生徒が多くてね。もう無いのよ」
「そうですか……」


盲点だった。まさか売り切れなんて。売り切れっていうのもおかしいけど。先生に説教なんかされてなければ!土方先生恨みますからね!


「どうしよっかなー」


下駄箱の前で雨が止むのを待ってみたけど一向に止む気がしない。こりゃずぶ濡れパティーンですか?そうなんですか?


「うし。覚悟決めて……とーう!」
「待て待て何してんの」
「う、わ!平助か……」


とーう!とか言っちゃったよ、恥ずかし!相手が平助だったのが不幸中の幸いだ。


「幼なじみとして恥ずかしいわマジで」
「うるさいな。で、なに?」
「傘ねーんだろ?入れてやるよ」
「マジでか。ありがとう平助ー!」



「これが所謂相合い傘というやつですか」
「……そーだな」
「なに照れてんの」
「照れてねーよ!」


耳まで真っ赤なくせによく言うよ。まあ、私もだけど。
さっきからさり気なく車道側歩いたり、私が濡れないように気を使ってくれたり、こういうところがモテるんだろう。なんだか平助との間は数センチしかないのにすごく遠く感じる。


「今更だけど誰かに見られたらヤバいんじゃない?」
「なんで?」
「だって平助モテるから変な噂立ったりしたら」
「いいじゃん別に」
「よくないでしょ」


平助が突然立ち止まるからどうしたのだろうと見上げればいつもと違う真剣な顔をした平助が私を見てて不覚にもどきりとした。


「オレは構わねーよ。なまえのことすきだし、むしろ変な噂たった方が都合いい」
「え、」


一瞬、平助がなんて言ったのか分からなかった。雨の音も聞こえないぐらい時が止まったみたいで、でも確かにそれは耳に残ってる。


「……すきだよ、お前が」
「…………」
「だから変な噂とかなってもいっかなーって」
「……顔真っ赤だよ平助」
「ちょ、見んな!」


だせーとか言ってる平助はさっきと違ってなんだか可愛い。そんなこと言ったら怒れちゃうだろうな。


「で、返事は?」
「言わなきゃだめ?」
「だめ」


いざ言うとなると恥ずかしいなこれ!平助の顔を見てられなくて俯きがちになる。


「……私も…すき、です」
「……………やべぇ」
「なにが」
「今すぐなまえを襲いたい」
「は?」


ほんとムードの欠片もねーな!そこは耐えてよ!私のきゅんを返せ!
名前を呼ばれて、顔をあげたら平助の顔が目の前にあった。

別にキスするのは初めてじゃないのに緊張して、あれ、キスってどうするんだっけ?なんて軽くパニック状態。けれど、甘いキスはそんなことすぐ忘れさせてしまった。



君との距離あと0センチ

やっと埋まった。

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