「なまえ、落ち着いて聞いてくれ」
私の目の前には小さな男の子。栗色の髪に大きなくりくりの目。むちゃくちゃ可愛い3歳くらいの男の子。でも何処かで見たことがないだろうか。
「総悟出てこォォォい!!誰との子じゃボケェェェ!!」
「落ち着けなまえーー!!」
「離して土方さん!私という彼女がいながらどこのアマと……」
「それ女が言う台詞じゃねェぞ」
土方さんとあーやらこーやらと口論していると不意に裾に違和感を感じた。下を見るとあの男の子が裾をぎゅっと握りしめている。クソ……可愛いな。
「おねーたん」
はい。ノックダウン。
「じゃあ土方さんはこの男の子が総悟だって言うんですか」
「あぁ。そうだよ」
ちらりと横を見れば、口いっぱいにお団子を詰めてもぐもぐと食べる男の子。……いちいち可愛いなコノヤロー。
「仮にこの子が総悟だとして、どうしてちっちゃくなったんです?」
「攘夷浪士の仕業だ。あいつらが投げつけてきた爆弾に体が小さくなる薬品が混ざってたらしくてな、総悟はそれを浴びて小さくなったんだ。俺らが応援に駆けつけた時にはもうこの姿だった」
「そうだったんですか……。じゃあ他の隊士さんも……?」
「いや、総悟が庇ったらしい」
……カッコいいじゃないか。
「おねーたん、これ」
「ん?……くれるの?」
「うんっ」
団子を一つくれたマイエンジェル総悟。なにあの眩しい笑顔。あざといし、可愛いし、ほんとなにこれ。
「で、いつ戻るんですか」
「まだ分からねェが、すぐ戻んだろ」
そんな無責任な。若干土方さんを睨みつつ、団子を一口。あ、美味しいコレ。
「おいちい?」
「うん。ありがとう」
「えへへ」
ああ、その笑顔は一体どこに消えてしまったんだ。大きくなったらあんなドス黒い人間になるとはとても思えない。
「おねーたん遊ぼっ!ねっ?」
「いいよ。何しよっか」
「えーっとね、えーっとねぇ」
「……土方さん。私このままでもいいかも。こんな可愛い総悟ならずっとこのままでいてほしい」
「あのなァ、よく考えてみろ。もし、そのまま成長したら総悟が20になったらお前4「ギャァァァァ!」…分かったか?」
「……マズい」
早く戻さねば!
「……おねーたん?」
「総悟……」
「おにごっこ!おにごっこしたいっ……だめ?」
小首を傾げながら言うチビ総悟。
「…………もうちょっとこのままでいてマイエンジェル総悟!」
「はぁ……」
「おにごっこかぁ……じゃあ、あの瞳孔おじさんが鬼ね。実際に鬼だし」
「誰が鬼だボケェェェ!!それに俺はまだおじさんじゃねェェェ!お兄さんだァァァ!」
「わぁぁ怖いこわ〜い」
「腹立つなこの女……」
青筋を浮かべた土方さんをからかってたらまた裾に違和感。チビ総悟がまた裾を握りしめている。どうした。
「どうしたの?この人が怖かった?」
「……コイツ嫌い」
…What?
土方さんを睨みつけているチビ総悟。ああ……やっぱり。
「「……総悟だ」」
結局、土方さんが鬼でおにごっこをしたわけだが、チビでも総悟は総悟だった。
土方さんのすねや鳩尾を隙あれば攻撃してくる。流石の土方さんもキレて刀抜こうとしたから慌てて止めたんだけど……侮れないなチビ総悟。
「ん〜……」
「眠くなっちゃった……?」
「んぅ〜……」
目をこすってコックリコックリしてるチビ総悟可愛い。
「お昼寝しよっか」
「ん」
布団を引いてそのままお昼寝。寝顔クソかわええェェェ!!とりあえず写メって携帯の待ち受けにした。
あ……なんか私も眠いかも……。
もぞもぞと布団が動くのを感じて目が覚めた。私もつられて寝ちゃったのか。総悟起きたのかな……。
「総悟起きたのー?」
ぎゅっと抱きしめたのだが……。
「何でィなまえ。お前から抱きついてくるなんて珍しいねィ」
「………」
あれ?今変な声聞こえた。しかもなんか堅い。がっしりしてる。おかしいぞ。
「おい。返事ぐれェしろィ」
目を開けたらやっぱりいつもの総悟の姿。
「ま、マイエンジェル総悟は……」
「は?」
「早いよ戻るのォォォォォ!!」
「……?」
嘆く私を余所に私の太ももあたりを撫で始める総悟。ぞわってした、ぞわって。
「オイ何やってんだ」
「何って今からナニをヤるんだよ」
オイオイそういう雰囲気にいつなった。総悟の手を抓るも撫で続ける。
「布団まで敷いてそんなにシたかったのかィ?」
「違うわァァァ!!」
マイエンジェル総悟帰ってきて!!!
ちっちゃくなっちった