男は羊の皮かぶった狼なんて言葉があるけれど、アレはきっと本当なんだと思う。今わたしの目の前にいる人がそうだから。あ、でも羊じゃなくて兎の皮かぶったか。
授業も終わってさっさと帰ろうとしたら腕を掴まれた。あ、なんか変な音してる。ギチギチいってるぅぅぅ。
「なまえ」
「は、はい…?」
「今日うち来ない?てか来いヨ」
「わたしに拒否権は…」
「あるわけないだろ?」
「ですよねー」
半ば無理矢理連れて来られた神威のお家。
神楽ちゃんいるかなー。いてくれないと困るなーいろいろと。けど私の期待はばっさりと切り捨てられた。玄関に靴無かったもの。下駄箱にとか思ったけど神楽ちゃん下駄箱に靴片付けるような子じゃないもの。
「ねえ神威。お腹空かない?」
「別に空いてないけど」
「私なんか作るね!」
「いや、だから空いてないってば」
「何がいい?甘いもの食べたいよね」
「言葉のキャッチボール出来ないのこの子」
いつもなら部屋に無理矢理連れてかれてたけど、今日はどうやら機嫌がいいらしい。
神威の家にはよく来るし、料理もよく作ってあげたりしてるから手際よく準備を進める。後ろから神威が抱きついてきてひやひやしながら続けた。なに作ってるの?まだ?とか子供みたいで可愛らしいけど、耳元で言わないでいただきたい。
「ん、なまえなんか甘い匂いする」
「ちょ、嗅がないでよ。って痛い!噛むな!」
首筋を甘噛み(ではなかったと思う)された。血出てんじゃないの。結構痛かったんですけど。
これ以上噛まれちゃたまらんので神威の口に苺を突っ込んでおいた。
「あとは焼けるのを待つだけ」
「ふーん…」
「それまでヒマだね。どうしよっか」
「じゃあ一発」
「ん?」
「一発できるよ」
「いやいや、なに言ってんの」
何言い出すんだこの子は。てか、あなたの場合一回じゃすまないでしょ。それにここキッチンだからね。
「俺の部屋に行けばいいだろ?」
「でもね、ほら確認したりとかいろいろしなきゃいけないからキッチン離れられないかな」
「じゃあ、ここで」
「神楽ちゃん帰ってくるかも」
「うん。俺は構わないけど」
「私がよくねーよ!」
私の抵抗も虚しく首筋にまたがぶりと噛みつかれた。だから痛いんだってそれ。
「なんで噛むの」
「なまえ甘くて美味しそうな匂いするから」
「だからって噛まないでよ。痕残ったらどうする、んっ」
「感じちゃった?」
「ば、か!」
噛まれたところを今度は舐められて不覚にもぞくっとしてしまった。いかんいかん!!このままでは神威のペースに乗せられてしまう。
「ホントだめだって」
「なんで?」
「だからァ……」
「俺もう我慢できない」
それは耳元で囁くように。神威は噛みつくようなキスをして笑顔でこう言った。
「いただきます」
ああ、私にはこいつを止められそうにないや。どうぞお好きなようにと言う代わりに私は神威に口付けた。
性欲旺盛男子
どうぞ召し上がれ!