24 | ナノ

 
雨がザアザアと降り、お気に入りのパンプスがどんどん黒ずんでいく。折り畳み傘を持ってたから濡れずに済んだけど、最悪。

落ちるかなぁ、とパンプスを眺めていたら前方から制服を着た男の子が歩いて来るのが見えた。


たぶん、高校生だと思う。普段ならすぐ目を逸らすのだけど、その子は俯きこの大雨の中傘もささずにふらふらと歩いていた。

なにあれ。失恋しました、的なアレですか。関わると面倒だとスーッと避けるように横をすり抜け、早足にアパートへ向かおうとした、のだけど。



「うわっ!? …」

バシャァアンという音ともに男の子の情けない声が聞こえた。
振りかえざるを得ない状況にちらっと後ろを向くと、何とも情けない姿で水たまりの上で転けていた。


私にどうしろと?

これって声掛けた方がいいのかな。でも高校生(推定)という敏感な時期にこんな姿に声を掛けられたらやっぱり辛いのでは?


葛藤の末、私は恐る恐るその子に近づく。しゃがみ込んで傘を彼の方へ傾けた。泥が跳ねてパンプスがまた汚れたけれど、もう気にしない。
水たまりに似つかわしくない黄色の髪がキラキラと輝いていた。


「大丈夫ですか。風邪、引きますよ」
「…………」
「私の家、このすぐ近くだったりするんですけど」
「…………」
「お風呂ぐらいなら貸せますけど」
「…………」
「来ますか。うち」


そう尋ねるとしばらくして、小さく小さく頷いた彼に、私は少しだけ安堵しつつ彼が立つのを待つ。断られたらどうしようかと思った。いや、どうもしないけど。


しかし、中々立ち上がらない彼のトロさにイラっとして腕を掴んだ。
筋肉質な腕に、何かスポーツでもしてるのかもしれない。なら、余計風邪とか良くないでしょ。なんて勝手に想像してまた苛立ちを覚えた。

いきなり腕を掴まれて狼狽える彼を無視してアパートへと向かう。
やっぱり放っておけばよかったかもなんて思いながら。


「これ、タオルです。あと小さいかも知れないですけどジャージ。制服脱いだらそこ置いといてください。乾かしちゃいますんで」
「……なんか、すんません。何から何まで」
「あ、」
「え?」
「綺麗な声してるんですね」


やっと話してくれたから、そう言って笑えば、彼は俯きがちだった顔をもっと下げた。お借りしますと小さな声で呟くと風呂場の扉を閉める。
うむ。チャラそうな見た目に反して彼は照れ屋なのかな。


一人暮らしの家に他人のシャワーを浴びる音の不慣れさに変な感じを覚えつつ、彼の制服を乾燥機に投げ込んだ。

あ、パンツどうしよう。

2014/07/21 (18:00)
back

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -