「ねぇねぇ青獅子の学級の中なら誰がいい?」

食堂でご飯を食べているとドロテアが乗り出すように聞いてきた。突然のことで口に運ぼうとした魚がぽとりとお皿へ落ちる。私の両隣にいるメルセデスとアネットはきょとんと目を丸くした。

「な、なんの話?」

たまらず声をあげるとドロテアは嬉しそうに続けた

「何って、結婚相手によ!けっ・こ・ん!」
「まぁどうかしら〜」
「青獅子の学級限定で選ばなきゃならないのー?!」
「ははっ…」

そういえばドロテアは結婚したいと常々言っていて、恋の話に花を咲かせることが度々あった。基本的に理想の相手の話になるのだけれど今回は違うようだ。

「そうねぇ。先生とか、いいんじゃないかしら〜」
「せ、先生?!」
「えぇっ?!メーチェ本気?!」
「やだ主人公ちゃん、アネットちゃんもしもの話よ!」
「うふふ〜そうよ主人公、アンー?」
「えぇ〜」
「そうきたか…」

メルセデスの発言に度肝を抜かれる。確かに先生はルックスと実力が伴っているうえに生徒にも優しい、紋章も持っているし結婚には持って来いの物件かもしれない。本気ではなさそうだけれど。苦笑いしながら少しあたりを見渡して、近くに青獅子の学級の生徒がいないか確認する。殿下やドゥドゥー、シルヴァンなどが目に入ったが、幸いこちらとは随分と席が離れているので耳には入らないだろう。

「ドロテアはどうなのよ」
「私?やっぱりディミトリ殿下一択かしら」
「ディミトリは優しいから、とってもいいと思うわ〜」
「殿下となんて恐れ多いよぉ…」
「添い遂げるとなると王妃にならなきゃだもんね」

アネットはあぁいいながらもノリノリで話に花を咲かせている
ディミトリ殿下は、王妃という重大な責務を除けば彼もまた優秀で優しい男性であるから一生を共にしても幸せな未来になるだろう。

「なんだかそう考えると青獅子の学級は割と好青年がいるかもね」
「ふふ、主人公ちゃんもそう思うでしょ?」
「主人公は誰がいいの?」
「そうね〜主人公の好み、気になるわぁ〜」
「えぇ、わたし?」

ふと、頭に過ったのは青漆色の髪を持つあの人だった。急に恥ずかしくなり頭を左右に振り邪念を断つ。あくまで、青獅子の学級の中での話であって、リンハルトは関係ないのだ。もし対象が全学級だったとしても別に本気の話じゃないんだから。これは所謂お戯れだ。

「そうだな…アッシュかな」
「アッシュくん?なんでまた」
「あ、…主人公」
「普通に優しいし、よく働いてくれそうなイメージだし、弓の技術もあるし男前だよね。結婚相手としては将来有望って感じじゃない?」
「主人公ってば!」
「なによアネット」

さっきまであんなに乗り気で話していたアネットは、急に冷や汗をかきながら後ろを必死に指差している。うしろ?

「あ、ありがとうございます主人公。そう思ってもらえるのは光栄だよ」
「アッッ!!」

振り向けば少し照れながら頭をかくアッシュが目に写る。私の顔は一気にゆであがった。さっきまでは居なかったのにっ!!
ドロテアはうふふ〜失礼!と言って何処かへ行ってしまい、メルセデスはあらあら〜というだけだった。

「あのこれはその」
「冗談で言ってるっていうのは、なんとなく分かってますから大丈夫ですよ主人公」
「あ、う、たしかに冗談だけどアッシュが男前なのは本当の事で引く手あまたなのは百も承知でこんな私なんかが上からモノを言えるようなお人ではないとは分かっていて」
「ほ、本当に大丈夫ですから」
「うぅ…」

穴があったら入りたいとはまさにこの事。本人に聞かれるなんて恥ずかしい事この上ない。三人も気にせず食べてください、とアッシュは言ってそのまま食事を再開した。ふと前を見るとリンハルトがぱちくりとした目でこちらを見ていた。

「り、りんはっ」
「ふーん」

彼は一言そう言って今日のメインディシュを頬張った。それからリンハルトはこちらを向く事も言葉を発する事もなかった。
さ、最悪だ。ガラガラと音を立てて私の恋は終わった。



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