メロンパンとサラダと牛乳

柳 蓮二。
この春、立海大付属中学校に入学した。

今日は都合により、弁当ではなく買い弁をすることに
なった。


初めて購買に来てみた俺は、その世界の険しさに呆然
とした。

"弱肉強食"の世界、いわば戦場である。
他人を押し退け、我先にと金を払ったものがパンを手にすることができるのだ。


生憎 体の小さい俺は、その人込みにすら潜れずにいた。

腹は減るし、最悪の場合このまま昼休みが終わってしまうなんてこともあり得る。
そんな惨事だけは御免だ。

どうにかしてこの戦場に飛び込まなければ。

だが飛び込んだといって弾かれるのがオチだろう。




『ねぇ、何してんの?』

策を練っていると後ろから声をかけられた。

びくりと肩を跳ねさせ後ろを向くと、
同い年だろうか、一人の少女が立っていた。

「あ…えっと…」


どうやら俺は飯が買えないせいか、情けない顔をしていたようだ。

その少女はくすりと笑って戦場に目を向けた。



『何が食べたいの?』

「え?えっと…メロンパンとサラダと牛乳……」

『メロンパンとサラダと牛乳ね。ここで待ってて』




そう言うと彼女は、戦場の中に飛び込んでいった。




3分後、群れの中からパンを抱えて彼女が出てきた。

『はい。メロンパンとサラダと牛乳』

「あ…ありがとう」


おずおずと出した俺の両手には、昼飯の入ったビニール袋がしっかりと乗せられた。


「あ!お金!」

『あーもうあんまり時間ないし、また今度でいいよ。
じゃあ私戻るから。バイバイ』

「えっ…あ、ありがとう!」



大量のパンやお菓子を抱えて廊下を歩いていく彼女の背中を、見えなくなるまで見つめた。

早く戻って弦一郎に話したかったが「たるんどる!」と怒られるだろうから、俺だけの秘密にしようと思った。


彼女のことを頭に浮かべながら、少しだけ小走りで教室に戻った。







「…………というわけで、そのときの代金300円だ」

『いや遅くない?今更すぎない?』

「いらないなら、あの時の飯代は厚意で"おごってもらった"ことにするが」

『いや、返せ』



まさか、お前と今こうして隣で飯を食うとはな。

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