ひとり、踊ろうか
2013/09/11 15:02
「どうしてですか」
耳障りな音を立てて花瓶が床に落ちる。目を見開いて驚くヘリオスはただただ元凶であるキラを見つめていた。キラは何かを訴えるようにヘリオスを睨んでいた。
「どうして、ボクの思い通りにならない・・・!」
「キラ。落ち着け、どうしたっていうんだ」
「ボクは、今まで自分の欲しかったものは確実に手に入れてきた。なのにっ」
自分の整った容姿を使って老若男女構わず落としてきた。欲しいと思えば勝利も掴んできたし、思うがままに操ってきた。それなのにヘリオスだけはどうしたってキラの手中におちてこない。どうしてか分からない。どう頑張ってもヘリオスは振り向かない。最初はそれすら楽しんでいた。自分の好きにならないものがあるっていうのが珍しく面白かった。けれど、本当にどうにもならないものがあると分かると、それは許せなかった。意地で通していたけれど、結局はこの様。子どもの癇癪のように叫ぶしかできなかった。
「・・・オレが、悪いのか」
「あぁ、そうだ。あんたが悪いんだ」
「・・・そうか」
口汚く答えるキラは珍しく、それだけ追い詰められていることをヘリオスは悟った。原因が自分、でも何をしたか分からない。
「ここ、出るか。原因と一緒に住んでるのは辛いだろう」
突き放したわけではない。けれど自分が原因だと言われたらその本人と毎日顔を突き合わすのは苦痛でしかないはずだ。だからそう提案してみたものの、キラが泣きそうに顔を歪めたから何も言えなくなった。
「バカですか。貴方は、本当バカだ。ふざけるな」
低く唸る声に目を閉じた。
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