「なァ、参考までに聞きたいんだが…」
口元を歪めながらかけられた言葉に、私は薄ら寒いものを感じながら「何よ」とだけ返した。仕事を終えてアジトに帰って早々に絡まれるだなんて気分が悪い。 メローネは実力こそ相当なものだけれど、あまり傍に近づきたくないのが本音だ。ベイビィ・フェイスは強力だけど、正直なところその能力にはゾッとしてしまう。
「君は、どの”仕方”がお好みなんだ?」 「…は?」
パソコンの画面に映されたそれは確か、彼がスタンドを「出産」させる時の手順の一つではなかっただろうか。 思わず鋭い声を出した私にメローネは心底楽しそうに笑っている。
「まさか私を母親にするつもり?」 「はは、まさか!」
分かりやすく距離を取った私へねっとりとした視線を這わせる男にビンタの一つでも喰らわせてやりたいものだが、そんなことをしても喜ぶだけなのは分かりきっていた。…この男はそういう男だ。
「大切な仲間を母親になんかしないさ」 「どうだか」
アンタならやりかねないと思うけどね。そう思いながらまた距離を取ろうとすると、今度はメローネが歩みを進めてきて、私は咄嗟にスタンドを発現させる。
「…おいおい、そんな怖い顔するなよ。興奮するだろ」 「最低。それ以上近づいたらド頭ぶち抜くから」
目を細めて舌なめずりするこの男を最早仲間だと思いたくはない。さっさとリーダーでも誰でもいいから帰ってきてくれればいいのに。
「…母親ならその辺で見繕って」 「だから、君を母親になんかしないさ」
今度は呆れたような顔をしたメローネに「信用できる訳ないでしょう変態!」と叫んでやる。その言葉に嬉しそうな顔をするものだから余計に説得力がない。
「本当に、これは俺自身が興味があって聞いてるんだぜ?」 「…例えそうだとしても答えないわよ」 「頭が固いなあ」
やれやれと首を振ったメローネは遂に諦めたのか、傍のソファに勢いよく座って両手を挙げた。
「君のスタンドは恐ろしいからな、怒らせて殺されたら最悪だ。…この辺で諦めるとするよ」 「ええ是非そうして」
どっと感じた疲れに頭を抑えた私にケラケラとメローネが笑うので、殺意がぶり返してきそうで堪らなかった。本当に癪に障る男だ。
「次は”実践”方式で君の好みを聞くことにするよ」
舌なめずりをして私を見つめる男をぶん殴ってやりたかったけれど、最早それをする気力もない。……本当に最低な男。
|
|