「団長」
「何?」
「明日の朝飯なんですかね」
何言ってんだコイツ。
急に始まった脈絡などこれっぽっちもない会話に、少し苛立つ。仕方ないから答えてやるんだけどね。
「サバノミソニ、だってサ」
答えてやると、瞼を閉じたまま女は少し頬を緩めた。その脳裏で味でも思い起こしているのか、んふふ、とだらけた声が聞こえる。
「めっちゃ食べたいなあ、地球料理」
「……食べればいいでしょ」
「そうっすねー、食べたいです」
「だから、」
食べればいいだろ。
口から溢れた低い声に、女がまた楽しそうに笑う。お前が地球の料理をここでも食べたいって、そう言うから用意したんだ。食べてくれないと困る。
「……団長、怖い顔」
楽しそうに笑う女が、ほんの少しだけ目を開いた。その奥から覗く色がどうしても見たくなって、そっと女の顔を覗きこむ。
「俺が全部食べちゃうヨ」
「えぇー、ひどいなあ」
「……嫌なら早起きして食べて」
「いやぁー、無理そうだなあ」
あはは、と乾いた笑いを漏らした女が、またその瞳を閉じた。ひゅう、と音が鳴る。乱れた息と、途切れ途切れの呼吸、額に光る汗が、どうにも俺をそわりとさせた。
額に張り付いた髪をそっとどかしてやる。
「その程度の傷でへばって、弱いよね、お前は」
「……あはは、そりゃ、団長に比べたら。団長は最強なので」
「うん、知ってる」
「あはは、流石。……すごい自信」
「当たり前でショ」
女がはっきりと、団長、と言って目を開けた。
「……もうそろそろ、眠いです」
「寝るな、……命令」
「えぇー……はは、は」
こちらへ目を向けた女が、目を細めて、嬉しそうな顔をする。命令されて喜ぶなんて、そういうシュミだったか。
「何、そのだらけた顔」
「だって……団長が、そんな顔、するから」
「どんな顔?」
「……内緒、です」
「ナニソレ」
「......ふふ、」
「……ねえ、」
「.................」
「寝るなっていったデショ、バカなの?」
「..................」
「なんか言ってよ」
静寂が、痛い。