最後の火曜日







いつもと同じ火曜日。


いつもと違う雰囲気が僕たち二人を包んでいた。



「チャンミン。」

「はい。」



優葉の視線が僕を促す。

たわいもない話を繰り返す僕に、彼女はタイミングをくれた。

彼女から告げるのではなく、ぼくから告げるタイミングを・・・



「優葉。ありがとう。」

「私こそ、チャンミンにありがとうを言わなくっちゃ。」

「いいや、僕こそ優葉に感謝をしています。優葉は僕の望みをかなえてくれた。平穏な毎日、愛する幸せ。」

「チャンミン・・・」

「どれだけ・・・このまま僕のすぐそばに優葉を置いておきたいって・・・どれだけ思ったか。」





想い出をかみ締めるように何度も繰り返す。


「そうね。私も一緒よ。」


そういって僕を見つめた優葉の瞳ははかなく微笑む。


「チャンミンとなら、ずっと、ずっとね同じ未来を見れるって思ったときもあったわ。」


さっきまでの決心が優葉の瞳に吸い込まれて忘れてしまいそうになる。


「優葉・・・僕たちは同じ方向を見つめてないのですか・・・」

「ふふふ。チャンミンと同じペースで同じ方向を見続けたら・・・私、息切れしちゃう。・・・そのぐらい君は光の速度で駆け抜けていってるんだよ。」



厳しい優葉は僕の気持ちを察して、再びやさしく突き放す。


「・・・」


「こんなところでいつまでも足踏みしちゃダメ。私なんかのためにリスクを犯しちゃダメ。日本に来た理由は違うはずよ。」


「優葉・・・僕は」

「チャンミン。」



瞳の奥に揺らぐものがあることを僕は見逃さなかった。

でも、僕を更に突き放す君の声に僕は言葉を止めた。



「優葉。」

「なに?」



やさしく優葉は僕を見つめる。

本当に大切なものを見るように。

その瞳から彼女の愛情を感じ取れるからこそ、僕は口を開いた。


「優葉。僕は君が世界中のどこにいても、いつでも元気にがんばる姿を見せ続けます。」


「うん。」

「ずっと進み続けます。何があっても。」

「うん。」

「そうすれば僕は優葉とつながっていられますから。」









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