やさしい記憶 |
そして、あっという間においしい香りがあたりに立ち込め、それに答えるように僕のお腹も鳴り出した。 「せかさないで。もう、できるから。」 「お腹の音は僕の意思とは無関係なんです。」 恥ずかしさを隠すために、出来上がったものを部屋へと運んでいく。 「これで最後だから座ってて。」 「はい」 小さなテーブルにたくさんの小皿が並ぶ。 「テレビでたくさん食べるって言ってたから。」 そういって、優葉は綺麗に手をあわせ「いただきます」と言った。 僕も優葉の動作を真似る。 食事中は本当に穏やかに時間が過ぎていった。 ゆっくりと、この時間をかみ締めるように、ゆっくりと食べすすめていく。 途中で、急に胸がいっぱいになって、僕はそれを隠そうとわかめスープを喉に流し込んだ。 君と・・・ 優葉と二人で毎日平穏に過ごせていけたらいいのに。 でも、僕は夢と引き換えにこの平穏を手放したんだ。 4 |
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