やさしい記憶 |
「おはよう。優葉」 「おはよう。もう起きてきたの?」 「はい。」 やっと君はこちらを振り向いた。 「起こしちゃった?」 「いえ。もともと休みの日もこのぐらいに起きるから。」 「そっか。ご飯食べる?」 「いいんですか?」 「もう二人分作っちゃったから食べてくれないと困るかも。」 「じゃあ、お言葉に甘えて。」 「よし。」 満足げにうなずいた優葉は僕に部屋に戻るように言ったが、僕はキッチンに立っている優葉をただ見ていたくて、台所をうろつく。 そんな僕を見て、優葉はやさしく笑った後「チャンミン大きいから邪魔」という。 その顔からは僕を邪険に扱う要素は少しもなく、愛しんでくれていることを十分に感じた。 「我慢してください。どんなものができるか見張ってるんです。」 「失礼しちゃうわ。料理は得意なんだからね。・・おそらく。」 「おそらく?ほら、やっぱり見張っています。」 おそらくなんて言って、優葉の手際のよさはさすがだった。 料理を作りながら、いろんなことを話してくれた。 ずっと親元を離れているから料理は昔から得意だったって事。 好きな食べ物がフルーツだって事。 嫌いな食べ物が一つもないって事。 動物が大好きだって事。 優葉の話を聞いている事、それは二人で抱き合っているような感覚になる。 まるで優葉の発した言葉が、僕を柔らかく包み込むような感覚。 3 |
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