やさしい記憶 |
あの日の翌日は珍しく休みだったんだ。 僕は布団の中でゆっくりと伸びをした。 その時、足の先がひんやりとする。 少し布団からはみ出したつま先に、宿舎ではないことに気づく。 そうだ、この腕に・・・ 君の姿はもう既になく、遠くで物音が聞こえる。 僕は改めて、日の光にさらされた、この小さい部屋に目をやった。 部屋は一つだけ、小さな部屋にはベッドと机しかない。 生活観のかけらもない、質素な部屋だった。 ”もう大丈夫”と言った昨晩の優葉。 その一言に含まれているいろんな気持ちを僕はやっと理解をする。 部屋に目をやっていると、ベッドのすぐ横に、綺麗にたたまれた僕の服を見つける。 几帳面に、僕が袖を通す順番で重ねられた洋服が、ただの服ではなくとても愛おしいものに思えてくる。 おいしい香りに誘われ、僕は部屋を出た。 曇りガラスの引き戸を開けると、僕は低い鴨居に頭をぶつけないように、少しかがんで君の元に向かう。 扉を開けると、すぐ台所に立つ君が目に入った。 2 |
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