偶然





今でも鮮明に思い浮かぶ優葉の匂い・感触



先に店に着いた僕は過去に思いをはせながら、いまだ現れぬ優葉を待ちわびていた。




グラスを傾けながら、あの偶然が運命に代わった夜を思い出していた。






「チャンミン・・・ゴメンね。」





あの夜、眠りについた僕に優葉は言った。



そして、今までで一番やさしいキスを僕に一つ落とした。






僕たちははじめから終わりに向かって進んでいたのかも知れない。

でも、だからこそ、こんなにも僕に優葉が鮮明にしみこんでいるんだ。




僕がたとえ、すべてを受け入れるといっても、優葉は僕を受け入れてはくれないことは知っていた。


優葉に出会うまでは、男女なんて愛さえあれば、たとえそびえ立つエベレストでも越えられるって思ってた。




愛だけじゃどうしようもできないこと。




世の中にはいくら身を切る思いで願っても、いくら身をささげても、どうしようもできない事があるんだってことを優葉は教えてくれた。




そして・・・


こんなにも人を愛することを・・・










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