偶然







偶然は何度か続くと運命だと誰かが言っていた。

でも、生きていてこれが運命だ。なんて思ったこともなかった。

そんな、人生ドラマチックに生きてきても居なかった。




私の運命とは何なんだろう?




私とチャンミンの人生が交差することは運命だったのだろうか?

それともただの偶然。

いたずら?





でも事実は変わらない。

私はチャンミンと再び再会をしたのだ。




まるでなかったことのように、胸の奥に押し込めて痛かった思い。






チャンミンとの再会をした夜。

私は両親に家を出たことを話した日だった。

まだ若いのに離婚していいのか?と母は言い。

でもまだ若いから、再出発できる。と父は言った。

私はただ、これから先ずっと、私の人格がなく生きていくことができなかった。




あの夜はもうボロボロで、一人で立ってるのがやっとだったんだ。


まったく星のない空を見ていたら、振り出した雨。


昼間の温かさを感じさせないほどの冷たい雨だった。


その雨が私の体温をドンドン奪っていった。








突然、鳴り出した携帯電話。





いろんな理由をつけては番号もアドレスも変えなかったのは、きっとどこかに未練が残っていたから。


何度も変えようとしたけれど、携帯ショップの前に行くと、私の足は動かなくなり、結局、踵を返すしかなかった。











「・・・チャンミン」





鳴り響く携帯電話に思わず口にした彼の名。

自分の声があまりにもセンチメンタルに響いて、びっくりする。



このあたりに彼とは出かけたことは一度もなかった。
東京で再会するなんて思いもよらなかった。





「優葉・・・」




一瞬でチャンミンの声だってわかったよ。
私は聞こえてきた声に当たりを見回した。

最後に前を向くと、もうすぐそこまで駆け寄ってきたチャンミンと目が合う。

チャンミンは私に駆け寄ったとたん、力いっぱい抱きしめて、私の名前をただ呼ぶことを繰り返した。


その声はまるで自分自身に、これは現実だと教え込むように聞こえた。




「優葉どうして?ここに・・・?」

「チャンミンこそ。」




そう言う私の声はいつものはっきりとした口調はどこかにやってしまい、何かにおびえている少女のようにか細く夜の闇に響く。




「ユチョンに教えてもらったお店に行ってきた帰りなんです。そこで・・・まさか」

「そんなことって」




今、この状態を把握するだけで精一杯の私にチャンミンは「人がいるから」そう言って、冷静にタクシーを止める。

タクシーを止めるチャンミンの後姿は私の知っている彼よりもっと大人びて見えた。


タクシーのハザードランプが夜闇に光る。

ずぶぬれの私たちを見て、嫌な顔をしたタクシーの運転手。

チャンミンは運転手が何かを言う前に、私をタクシーに急いで乗せ、自分も乗り込んだ。




「とりあえず、出してください。」

「僕の宿舎はヒョンたちがいるので、どこかに・・・」




一生懸命考えているチャンミンの横顔はやっぱり、少年さが少し抜けた精悍な顔つきに変わっていた。




「私の家でいいよ。」

「でも・・・」

「もう、大丈夫なの。」




黙り込むチャンミンの代わりに私は行き先を告げた。









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