偶然







たった5年でこの家を出るとは思わなかった。

はじめは暖かかった我が家。

二人で少しずつ貯金したお金で買い揃えた家具。

まだ若かった私たちは周囲の反対を押し切って結婚した。

私はまだ大学生だったし、彼だって世間知らずの若者だった。


何が原因かはわからない。


少しのひずみが大きなものを生んで、しだいに音もなく崩れていった。



彼は私が家を出たのも2日後に気がついた。

それだけ私たちの関係は破綻していた。






でも、署名をしたまま置いてきた離婚届はいまだに提出されては居なかった。






あの時私は一人、真っ暗などこに続くかもわからない一本道をただ、惰性のままに歩いていた。

真っ暗な道に突然現れたキラキラと光輝く彼。






・・・これ以上一緒にはいることはできない。


これ以上一緒に居たら、私はチャンミンから離れることができなくなってしまう。





もう、私はチャンミンと歩めるほど無邪気じゃなかった。

それに、チャンミンにだって私はふさわしくない。


感情よりも先にそうやって脳が物事を整理していく。

そして、心がねじれてしまいそうなほどに、私はチャンミンを突き放した。


こんなにも胸を焦がすけど、チャンミンは・・・


綺麗に縁取られた額縁の向こう側の人なんだ。



鮮やかな絵の具たちに彩られた夢の中の住人。


私はいろんなものを跳ね除けてしまえるほどの勇気も強さもなかった。


もっと早く、もっと違う形で合いたかった。





私の大好きなチャンミン。










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