鈴の音 |
「優葉。」 「ん?」 優葉はグラスを傾けて返事をする。 二人並んでカウンターに腰掛、少し触れ合っている太ももが熱い。 でも君は視線は前に向けたまま。 「優葉は・・・僕の事が好きですか?」 「・・・。正直わからないわ。」 「正直すぎますよ。」 たった、3回目のデートで僕はこんなにも胸を締めるけられるとは思っても見なかった。 この前の夜、別れ際。 彼女が僕に継げた言葉。 僕は有頂天の天辺から突き落とされた。 でも、僕はあなたのアドレスを消すことはできなかったんだ。 何度も携帯を開いては優葉の番号を呼び出す。 携帯を持っている手に残っている優葉を抱きしめたときの柔らかな感覚が、僕がボタンを押すことを阻むようにして、何度も何度もよみがえった。 そしてよみがえるたび、真実が僕の指を凍らせる。 「チャンミン。私は・・・この前話したとおり・・・」 「ウソをついて欲しいと初めて思いました。」 彼女は僕の言葉に意味もなく音を立て続けていたマドラーをもてあそぶ指を止める。 彼女が人のものだと知ったとき、僕は物語から逃げ出した。 逃げ出して、傍観者を心の中で決め込んだんだ。 リアクションが取れるほど大人にはなれなかった僕は「正直ですね」なんて一言告げただけで、その日彼女と別れた。 「ウソが嫌いなのに?」 「優葉が入っていた意味が少し理解できた気がします。」 僕は彼女の手に触れる。 彼女の手は僕から逃れようとするが、僕はそんなのお構いなしに強引に握り締めた。 「チャンミ・・・」 「僕は少しは大人になったって言うことなんでしょうか?」 言葉が見つからないんだろう。 困惑した表情を浮かべる優葉。 困らせたいわけじゃない。 いじめたいわけじゃない。 攻める気もないんだ。 でも。 このまま、話し続けたら自分の中のフラストレーションをすべて彼女にぶつけてしまいそうだった。 2 |
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