Love is blind






目を開けると、優葉との暖かな時間は消え、真っ暗な天井が視界に写る。


過去を抱きしめて、僕は布団の中にもぐった。


さっき、寝る前にジェジュンと交わした言葉がよみがえる。





「チャンミン、今・・・幸せか?」

”幸せ”

「よくわからないです・・・」

「チャンミンはやさしいから。苦しんでいるようにみえるよ。」

そういって、ジェジュンは温かな手のひらを僕の肩に乗せる。


「僕は優しくないですよ・・・ジェジュン。僕は利己的なんです。」


そう、僕は利己的で貪欲で、ぜんぜん優しくなんて無い。



「そっかな。チャンミンはやさしいよ。」

そういってジェジュンは包み込むように顔を綻ばせた。


ジェジュン。

ジェジュンは幸せは人の価値観だから、世間の物差しでは計れないというけれど、きっと僕の望む幸せは、どの物差しで計ったって許させるものじゃないんだ。

ジェジュンこそやさしいから・・・

「幸せって難しいよな。改めて考えると。」

「はい。」

「全部ひっくるめて幸せかどうかって振り返ったときに初めて感じるのかもな。」

「振り返ったとき?」

ジェジュンはうなずくとやさしい微笑を浮かべた唇を軽く握った拳で隠す。


「それに、俺たちの恋愛は普通の学生とかよりも大変かもね。だからこそ、一つ一つの恋で自分を粗末に扱うのはやめて欲しい。それがヒョンの願いだよ。」




真っ暗な布団の中で、記憶のジェジュンに「ありがとう」とつぶやいた。





優葉との時間は幸せと苦しみが合わさって存在する。
これが本当に人を愛するってことなの?

今まで目にしたドラマや小説。
その中での恋愛は困難の後に幸せな時間が待っていた。
主人公たちは瞬間瞬間を幸せをかみ締めながら過ごせていたのだろうか?


自分が主役の自分の恋

初めて主役になったときの記憶を引っ張り出すと、ドキドキとうれしさと、そして別れた後の悲しみだった。


愛しているからこそ切ない、苦しい、やるせない思い。

こんな思いがあることを優葉は僕に教えてくれた。




ジェジュン。それにヒョンたち。

ゴメン。

僕はまだ、この恋愛から抜け出せそうに無い。

だって辛くても、やるせなくても、切なくても、その中にひっそりと輝く、彼女を愛する気持ちをあきらめることができないから。

彼女の温かなぬくもりを手放すことはできないから。


もう少しこのままで。


スイートな愛じゃない、とってもビターな優葉への愛。




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