Love is blind






少しの沈黙のあとジェジュンが「明日も早いけど大丈夫か?」と小さな声でつぶやく。

毎日、ハードスケジュールで疲れているメンバーたち。
みんなを起さないように、僕も自然と小声で答える。


「はい、少ししたら寝ます。」


少し言葉を捜すように、ジェジュンは一度視線をはずして、ゆっくりと僕を見つめる。


「そんなに・・・チャンミンに辛い思いをさせてるのは何なんだ?」



僕はそんなに辛い表情をしているのだろうか?
すぐに否定をしようとして、ウソの否定もできない心が僕をうつむかせる。


「俺じゃ・・・力になれないか?」


いつもじゃ、その程度のジェジュンの口説き文句じゃ落ちない僕も、切なさに揺らいでいたせいか、思わず目頭が熱くなるのを感じる。

一度、息を止めて、ゆっくりと吐き出す間に、熱がだんだんと冷めていく。

ジェジュンはそんな僕をやさしいヒョンの顔で見つめていた。





「無理にはいいよ。でも少しでも力になれればって・・・俺たちメンバーでチャンミンの心を少しでも軽くできるならって思ってな。」




ジェジュン、俺を泣かせようとしてるでしょ?


僕はポツリ、またポツリと口を開いていく。

「ヒョン。僕はそんなに悲しい表情をしてますか?」
「・・・幸せそうには見えないよ。」

”幸せ・・・”

もう、最近は心が麻痺して、よくわからないんだ。

「ヒョンは今、幸せですか?幸せって何ですか?」

僕は少し、食って掛かるような言い方をする。
でも、ジェジュンは微笑んだ。

「質問されるとは思わなかった。そういわれると難しいよな。・・・ちょっとまって・・・」

ジェジュンはその顔にうっすらと笑みを浮かべて、思考をめぐらしている。

人って”幸せ”を考えるだけで笑顔になれるんだね。

口は笑って、眉間にはしわを寄せて、複雑な表情のジェジュン。

「たくさんあるから絞るのに迷ったよ。まずは・・・次のアルバムが前よりヒットしてくれる事、あとは、彼女ともっと一緒にいたいとか・・・」


「もっと一緒にいたい・・・か」

僕は思わず、ジェジュンの言葉に自分の思いを乗せてつぶやく。
ジェジュンは僕の中の難解な問題を、サラリと言ってのける。

「大好きだったら当然じゃないか?」

「ヒョン、たまにしか会えてないよね。」

「そうだな。日本人だし、日本にいる間しかチャンスは無いけど、相手の仕事もあるからな。」


ジェジュンの彼女は確かフリーのライター。


「一般人の彼女とうまくやっていくのは大変?」
「そうだな。いろいろと制限はたくさんある。だから、色々と努力しないとうまくいかないよ。」

ジェジュンは言葉とは裏腹にうれしそうに微笑む。


その表情はあの日の優葉のようだった。

あの時、君の目の前にいた僕も同じように笑えていたかな?










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