2.time goes by





終了の声と同時に僕は周囲の人に挨拶を済ませ、はやる気持ちを抑えきれずにあわただしく着替えだした。

「チャンミンお疲れ様。」
「ユノヒョン。お疲れ様です。待っていてくれたんですか?」
「ほかのメンバーはもう宿舎に帰ったから、一人だけ置いていくのかわいそうだと思って。」
「アリガトウございます。…でも、ユノヒョン、僕ちょっと約束があるんです。」
「…どこに行くんだ?」

さっきまでの優しい表情から一瞬、ユノの目が鋭くなった。
先週の火曜日、次の日の撮影が早いのに遅く帰宅して怒られたばかりだった。

「友人のところです。」

ごめん。ユノヒョン。

「友人?この前の人と同じか?」
「はい。でも今日は遅くならないように帰ってきます。」
「ホントだな?明日も早いから仕事に支障が出ないようにしろよ。」
「はい。」

僕は途中でユノヒョンの目をそらしたくて堪らなかった。
ユノヒョンの言いたいことはわかってる。
でも、どうしても押さえられないんだ。
一瞬でもいいから彼女の体温を感じていたい。
それがあるから日本でがんばってやっていける。


僕ははやる気持ちを抑えきれずに、撮影スタジオを飛び出した。
目深にかぶった帽子をさらにギュッと押し込めただけで僕はタクシーを止めた。


控え室を出るとき、少しとがめるような目を向けたユノヒョン。
ごめん。お説教は帰ってから聴くから。

優葉の元に。





タクシーのドライバーに行き先を告げると、僕は窓から外の景色に目をやった。
韓国と違い、この町は冬でもほとんど雪は降らない。
頬を突くような冷たい空気にもならない。
母国のことを考えていると胸の奥が切なく鳴く。

そういう時はゆっくりと目を閉じ優葉の事を思う。





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