一目見て好きになった、付き合ってほしい。突然のメールでの告白に主4は難しい顔をした。まずアドレスは聞かれた気がするがこの男、メールの差出人の名前は中原となってるから名前は分かるが、顔が思い出せない。たぶん一言二言ぐらいしか話したことのない人物だ。そもそもこの顔も思い出せない男は自分のことをナメているのではないか。なんのアピールもなしにメールで告白ぅ?しかもこの主4に!ありえない!

そんな時に思い出すのはいつも山崎にされた告白だ。あんなドキドキは初めてだった。スーツにたくさんの薔薇の花束。真っ直ぐに想いを伝えてくれた山崎がかっこよくて、まるで自分がずっと夢だったお姫様になったように思えた。

そんなことを思い出しつつ主4はもう一度携帯のメール画面に目を落とす。はぁ。ため息が出た。だけども同時に告白する勇気だってちゃんと知ってる。この男がどれだけの覚悟をもって好きと文字を打ったのかメールでは読み取れないがきっとそれでもいくらかの勇気は詰まっているはず。告白には誠意を持って答える。そういえば、と高杉のことが一瞬頭に浮かんで、懐かしいなぁと主4は小さくはにかんだ。





翌日、主4は隣のクラスに顔を出した。「中原って人いる?」そう近くの子に聞けば中原が呼ばれて主4の前へやってきた。ふむ、とその男子を見定める。なかなかのイケメン。

「あ、昨日のメール見た?」
「見たよ」
「返ってこないからフラれたかと思った」
「返さなかったのは直接返事を言おうと思って」
「直接?へぇ、そういうこと気にするんだ。意外」

悪意はないのだろうが中原のその軟派な発言に主4の額に若干青筋が浮かんだ。今までなら怖気ずいてこんな発言できなかっただろうが、どうやら自分はあの世界でいくらか男気がついたみたいだ。

「主4を落としたいならスーツ着て108本の薔薇持って出直してきな」

そう強い口調で言い放てば中原は少しだけビビったように固まった。あ、やっぱりこいつ主4のことを泣き虫でか弱いただの可愛いだけの女子だと勘違いしてる。悪いけどもう護られるだけの女の子は卒業したの。今ここに立っているのは真選組の一員の主4だ。

「あ、でも告白は素直に嬉しかったよ。ありがとう」

それじゃあね。と言って教室を去る。自分の教室へと戻ればいつものメンツが昼ご飯を食べながらくっちゃべっていて「どこ行ってたの?」と声がかかった。

「ちょっとね!」
「ちょっとって何よ」
「べっつに〜!あー、お腹すいた!今日の主4のお弁当は手作りヘルシー弁当!あぁ女子力高くて困っちゃう!」
「自分で言うな!」


(しかし後日何かに目覚めたような顔をした中原がスーツを着て薔薇の花束を持ち主4の前に再び現れたのは別の話(但しすぐに先生に連れていかれた))



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