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それからまーくんの協力もあってわたしは丸々1コマサボることに成功した。幸い最後の1コマだったしそれから部活が始まるギリギリまでわたしは屋上で休んでいた。憎らしいほど眩しい太陽はわたしの制服をそれなりに乾かしてくれた。これでブンちゃんにバレないように帰れば完璧だ。一応わたしは具合が優れずに保健室で休み、下校時刻になればそのまま帰ると言うことになっていて、荷物はまーくんが持ってきてくれた。ブンちゃんに頼まなかったのは心配かけたくないからという理由だ。幸か不幸か、ブンちゃんは今日は掃除当番のはずだからどっちにしろ顔を合わせることはない。


「実加」


そして部活が始まって10分。部活に入ってるひとはもちろん、そうでないひとの人影もほとんどない時間帯。だから安心して帰ろう、と屋上から出た瞬間だった。


「なんで、」

「それ俺の台詞」


明らかに怒気を孕んだ声で、鋭い視線をわたしに向けるブンちゃんがそこにいた。一段一段、ブンちゃんは階段を登りわたしに近づく。あまりの刺々しさに足がすくんだ。


「保健室行ったら居なかったから仁王に聞いた」

「!」

「なんで隠そうとしたんだよ」


バン!と乱暴に扉に手をつくブンちゃん。どうしよう、怒らせてしまった。いちばん、一番避けたかったのに。


「し、心配かけたくなかったの、」

「俺のこと信用出来ねえのかよ」

「ブンちゃ、」

「実加は俺にこういう隠し事はしねえって思ってた」

「!」


悲しい。直接口にはしなかったけど確かにブンちゃんの顔はその気持ちを物語っていた。ずきり、と胸が痛む。ただ、ブンちゃんに心配をかけたくなくて、怒らせたくなくて、隠そうと思った。けどそんなのブンちゃんは求めていなかったのだ。どんなことだってブンちゃんはわたしに隠し事をされたくなかったのだ。自分を偽るような真似はしてほしくなかったのだ。


「…仁王には言えるのに、俺には言えないんだ」

「それは、たまたま、まーくんが、」

「いい。聞きたくない」


ふい、とブンちゃんはわたしから顔ごとそむける。今さら何を言ったってわたしがブンちゃんに隠し事をしようとしたのはどうにもならない事実だ。それでもまーくんが知っているのは偶然でしかないことは、それだけは、言いたかった。だけどブンちゃんはわたしの言葉に耳を傾ける気はないようで、わたしは何も言えなかった。


「………気をつけて帰れよ」

「え」

「俺、部活あるから」

「ブンちゃん、」

「……」


スッ、と離れたブンちゃんはわたしの声に振り向くことも立ち止まることもせずにひらひら手を振って階段を降りていった。







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