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「実加ちゃんてほんとに丸井くんとなにもないの?」

「ないよ?」


女の子とこんな会話をするのも日常茶飯事。特に男女別れてやる体育の時はいろんな女の子とこんな会話をする。


「友達なだけ?」

「うん、ただみんなより親密なだけ」

「ほんと?」

「ほんとだよ、触れあうけど別にちゅーとかそういうのは遊びでもしたことないし」


不安げに聞いてくるこの子はきっとブンちゃんが好きなのだろう。彼はモテる。本当にモテる。だからこんな会話を頻繁にするのだ。幸い過激派は(居るのかどうかは分からないけど)わたしになにもしてこない。きっと入学した次点でいまの距離感だから諦めてくれるのだろう。そこは少しだけありがたい。


「じゃ、じゃあ実加ちゃんは丸井くんのことそういう風に思わないの?」

「そういう風に、って?」

「だから、丸井くんには恋してないの?」

「してないんじゃない?」

「え」

「そもそもそういう違いがよくわかんないから」


そういうと女の子が少しだけ険しい顔をした。でも確かにわたしには分からない。所謂"ライク"の好きと"ラブ"の好きが。いやまあ"ラブ"の方はキスとかそういうのがしたいって対象なのかなあ、とか正直考えたことはあるけどそんなの言ったらグラビアの誰々とあんなことやこんなことしたいって騒ぐ男子はどれだけのひとに一度に恋してるのかって思って結局理解できないまま居る。でも別にブンちゃんが他の女の子に告白されてたってお菓子もらってたってブンちゃん人気だなあって思うくらいで特になにも思わないから"ラブ"の好きではないと思う。


「丸井くん、好きなひと居るのかなあ…」

「居ないんじゃない?そういうの聞いたことないし」

「ほ、ほんと??」

「聞いたことないのはほんとだよ」

「そ、そっか、」


ああ、この子は近々告白するのだろう。と直感的に思った。でもブンちゃんがOKすることはないだろう、とも直感的に思った。


「ブンちゃんさー」

「ん?」

「好きなひととか居ないの?」

「なんで」

「だってわたしとばっか居るから」

「好きなやつ居たらそいつとの時間優先するし」

「そっか」

「実加は?」

「さっきのお言葉そのままお返しします」


不意にブンちゃんとの会話が脳裏をよぎる。確かに彼はあのとき言ったのだ。わたしじゃなくて、好きなひとを優先すると。だから今の時点でブンちゃんが誰かを好きだなんてことはあり得ないのだ。だから、なんて確証はないけどブンちゃんのことだからそう仲良くない女の子に告白されて簡単にOKしたりしないだろう。とはにかんでわたしにお礼を言う目の前の子を見ながら思った。


「……我ながら嫌な子だな」

「え?実加ちゃん何か言った?」

「ううん、何も」








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