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幼馴染み。クラスメイト。知り合い。先輩後輩。部活仲間。友達。恋人。男女の関係を、いや、男女に限らず二人の人間の関係を形容する言葉はこの世にはたくさんある。いつからの付き合いなのかとかどんな距離感なのかとかいろんな条件によってその言葉は変わっていく。でもそんな形容する言葉はなくたっていいと思うのだ。なぜなら。


「実加おはよ!」

「ブンちゃんおはよー!」


わたしたちは簡単に一言で収まらない関係なのだ。


「……と哲学的に考えてみたけど馬鹿馬鹿しいや」

「?」

「あ、気にしないでただの独り言」

「なんか悩みでもあんのか?」

「ぜーんぜん!あったらブンちゃんに相談してるし!」


にっこりあどけない笑顔を見せるのはわたしがいちばん大好きなひと。そしてわたしのことが大好きなひと。自意識過剰なんかではない。


「そういや今朝買ってきたんだけどさ」

「あー!読む!読む読む読む!」

「だろぃ?そう言うと思って買ってきた」

「ブンちゃんのそういうとこ素敵!」

「じゃあ後でいちごミルクな!」

「えー」

「冗談だって、ほら、」

「ん」


そう言って先に座って、そのあとにわたしを足の間に座らせる。こんなの普通だ。わたしたちにとっては。いつからここまで親密になったのかと言われると正直覚えてない。幼馴染みというわけでもないし親戚というわけでもない。小学校からの付き合いだ。ちなみに恋仲ではない。強いて言うなら友達の枠である。


「あ、ブンちゃんの予想した通りだー」

「これはこれでつまんねーな」

「こんなとこで天才が発揮されるとは…」


あくまで"強いて言うなら"だ。恋仲でないのは確かだけど、きっとわたしたちの関係は端から見たらおかしいと思う。いや、おかしいのだ。


「おーおー、今日も仲がええの」

「あ、まーくんおはよー」

「はよ」

「ほんにそれで付き合ってないっちゅうんが不思議じゃ」

「だから付き合ってないっての」

「まーくんも疑い深いなあ」

「そりゃそんなべたべたしちょったら誰だってカレカノじゃと思うぜよ」


こうしてまーくんみたいに言うひとは少なくない。本当は付き合ってるんじゃないか、といった噂話だってされてるのは分かってる。でもわたしたちは確かに付き合ってないのだ。付き合ってない。ただ聞きたいのは付き合ってなければこのように親しくするのはいけないのだろうかということ。言わばわたしたちの距離感はたまに居るべたべた引っ付いている女の子たちと同じなのだ。それをたまたま男女がしているだけだ。なのにどうしてそこまで怪しむのだろう。


「ひっついてるから付き合ってる、って短絡的だよー」

「実加の言う通り、俺ら別に付き合ってないけどお互いのこと大好きだからこうなってるだけ」

「ラブの好きじゃなくて、か」

「別にブンちゃんとそーゆーえっちいことしたいとか思わないよわたし」

「朝からなに言ってんだよぃ」

「いひゃいいひゃいいひゃい!」

「まあ、おまんらがいいならいいんじゃが」


わたしたちはいつだってお互いのことが好きだ。好きなのだ。ただそれだけ。それだけなのだ。









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