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それから保健室の先生が戻ってきて、幸村くんも上手くわたしの仮病を隠すのを手伝ってくれて、1コマ目の残りの時間は先生と幸村くんと他愛ない話をして過ごした。休憩時間には幸村くんと教室のある階まで一緒に戻り、別れ際には頑張っての一言と優しく背中を押された。


「実加、」

「た、ただいま…」


ぎこちない笑顔で軽く手を振って見せるとブンちゃんは本当に心配してくれていた。まーくんはブンちゃんほどではないけど、それでもおかえりんしゃい、と優しく迎えてくれた。


「1コマ丸々居ねえから心配しただろぃ」

「ご、ごめん…」

「ブンちゃんが視界の端でそわそわ落ち着きがなくて集中出来んかったぜよ」

「俺のせいにすんなよ」

「本当のことじゃき」

「………。実加は、もう大丈夫なのかよ」

「、うん!心配かけてごめんね」


そんなに心配かけていたとは。口が裂けても本当のことは言えないな、と思った。居合わせたのが幸村くんだからきっと大丈夫だとは思うけど、幸村くん仮病だとは本当に黙っておいてください、と心のなかで手を合わせた。


「あ、そうだ実加」

「うん?」

「明日部活ミーティングだけだから、待ってて」

「!」

「なんじゃ、実加はいつもより嬉しそうじゃの」


にやにやとまーくんが意味ありげに笑う。対してブンちゃんは特になにも気にかかるところがないようでそうなのか?と首をかしげ、わたしはしどろもどろに気のせいだよと誤魔化した。いつもとの違いはともかく、嬉しいことにはかわりがないのは確かだ。だってわたしが大好きなブンちゃんと遊べるのだ。その意味合いが変わったって、わたしはブンちゃんと一緒にいる時間が一番幸せだ。と改めて思った。


「あ、まーくんも来る?」

「なんで放課後までその仲の良さを見せつけられないといけんのじゃ」

「そんなに嫌そうな顔しなくても」

「もう誘ってやんねーからな」

「そもそもブンちゃんから誘われたことなかろ」

「だから実加が誘わなくなるからなってことだろぃ」

「わたしそこまで言ってない」

「ほれ」

「実加は仁王に弱味でも握られてんのかと俺たまに心配になる」

「なんで」

「仁王にすげー優しい」

「ブンちゃんが俺に厳しいだけじゃ」

「そんなことあるわけねえだろぃ」


いつものようになんてことはない会話。わたしが今まで大好きで、大切にしてきたこの関係。ブンちゃんも、まーくんも、大切にしてくれているこの距離感。ブンちゃんは好きの意味合いが異なっていてもわたしの一番がブンちゃんであればそれでいいからと、この距離を大切に保っていてくれてる。まーくんも言わないし聞かないけど、この関係をまーくんなりに大切にしてくれてる。それなのに、もし、わたしがブンちゃんに自覚したこの想いを告げたら、どうなるんだろう。


「どのみち俺は俺で用事があるからの、ふたりで遊んできんしゃい」

「なんだよ、結局だめなのかよ」

「なんじゃブンちゃん、来てほしかったんか」

「いや、それほどでもない」

「ブンちゃんそんなんだから厳しいって思われるんだよ」

「そうじゃそうじゃ、まーくん傷つくじゃろ」

「自分で言うな」

「プリ」


なにか、変わってしまうのだろうか。変わらない、だろうか。ブンちゃんは今までわたしを女の子として見ていて、きっとまーくんもそれは察していて、だけどこの関係はなにも変わらなかった。わたしの場合も、なんてそんな安易に繋げても、いいだろうか。






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