「で、元気なのにサボりに来ちゃったんだ 」 「うん、ブンちゃんの言葉遮ってきたから余計戻りづらくて」 「ブン太、不思議がってそうだね」 「幸村くんそこは面白がることじゃないよ」 「ふふ、ごめんごめん」 一通りの経緯を聞いては穏やかに笑う幸村くんは、それで?と穏やかな雰囲気を崩さないままに尋ねてきた。 「実加ちゃんは、結局ブン太のことは男として見てないの?」 「……」 「…なんて、分かってたら悩まないよね」 「ごめんね」 「気にしないで」 「……うん」 「じゃあ、もしブン太が実加ちゃんじゃない女の子と付き合って、実加ちゃんのこと見向きもしなくなったら、どうだい?」 幸村くんの質問を受けて、想像する。自分の知らない女の子と仲良くするブンちゃん、そしていつしかわたしよりもその女の子を優先して、わたしのことなんてどうでもよくなっちゃって、……。 「、ごめんね。泣かせたくて聞いたんじゃないんだけど」 不意に幸村くんの手がわたしの頬に触れた。そこでわたしが涙を流したことにようやく気づく。困ったように笑って意地悪だったかな、と言う幸村くんにわたしは小さく首を振った。幸村くんはわたしを助けようとしてくれたのだ、意地悪なんてことは決してない。 「でも、答えを見つける手がかりにはなったかな?」 「……うん」 「それなら、良かった」 優しく笑う幸村くんは、不意に思い出したように声を出した。 「面白い話、してあげようか」 「?」 「今朝ね、小塚がブン太に面白いこと言ってたんだ」 「小塚くんが?」 「うん」 にこにこ、と先程とはまた違った笑みで幸村くんは続ける。とても、楽しそう。 「ブン太はいつも実加ちゃんと遊ぶときはなにしてるのか、って」 「???なんでそんなこと?」 「ブン太も同じ顔で聞いてたよ」 笑いをおさえられないのかくすくすと小さく、きっと同じような顔をしていたというその時のブンちゃんを思い出して笑う幸村くん。 「行く先々で実加ちゃんがブン太の話するもんだから、気になって仕方なかったみたい」 「!!!」 ふと昨日の小塚くんに言われた言葉が思い出され、そしてわたしの顔は再びかああっと赤くなった。幸村くんは一瞬だけ目を丸くして、それからまた微笑む。 「ふふっ、実加ちゃんは本当にブン太と一緒に居るんだね」 「うん、……ずっと、一緒だった」 「…これからも、でしょ?」 「!」 「一緒に居たい、って顔に書いてあるよ」 幸村くんはどこまでわたしの気持ちを分かっているのだろう、と聞きたくなってしまう。それともわたしが表情に出やすいだけなのだろうか。というのはともかく、幸村くんの言う通りで、わたしはこの先もブンちゃんと一緒に居たいと思った。ブンちゃんと話せないだけであんなに寂しかったんだから、他の子を優先されるなんて、耐えられる気がしない。他の子じゃなくて、ずっと、ずっとわたしがブンちゃんの一番であってほしい。そしてきっとこの気持ちは、"ライク"じゃないんだ。 |