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そしていよいよ後輩くん、もとい小塚くんと遊ぶ日がやってきた。普通に友達と遊ぶ感覚でいいと彼は言ったのだからあまり彼は緊張していないであろう。がしかし、わたしはとてつもなく緊張していた。なぜならわたしはブンちゃん以外のひとと、それも友達と遊ぶなどとてつもないイベントなのだ。緊張しない方が無理な話だ。


「川岸先輩」

「ぁ、小塚くん…」

「来てくれてありがとうございます」


指定された待ち合わせ場所に行けば時間前だと言うのに小塚くんはすでに待っていてくれて、わたしに気づくなりにこりと彼は優しく笑った。


「今日は一緒に楽しみましょうね」


それじゃあ行きましょうか、と彼は歩き始める。それからの時間はあっという間だったように感じる。特に特別なことはない。面白いコメディ映画を見て、ゲームセンターで遊んで、とそんなどこにでもあるような時間だった。


「あれ、もうこんな時間」


気がつけば日がくれていた。そろそろ帰らねばならない時間だった。


「じゃあ、小塚くん、わたし」

「はい、今日はありがとうございました」

「…ううん、こちらこそありがとう」

「おかげで川岸先輩のこと諦められました」

「、」


ケロッとした顔で本当になんでもないことのように小塚くんは言う。彼にとって大切な出来事だったはずなのに 。あまりにもあっさりしていて、驚いてしまった。そんなわたしの心情などお構いなしに彼は続ける。


「川岸先輩、ひとつ聞いていいですか」

「うん?」

「本当に、丸井先輩のことはなんとも思ってないんですか?」

「…………え?」


言っている意味が分からないわけではなかった。彼が言いたいのはわたしのブンちゃんに対する"好き"がラブではないのかということ。でもなぜこのタイミングで、いや、彼からしたらこのタイミングだからこそなのだろうか。


「自覚がないのかもしれませんけど、今日何回も川岸先輩の口から丸井先輩の名前が出てきて、丸井先輩の話をするたび仁王先輩や俺とかにはしない表情ばっかりしてました」

「、」

「川岸先輩の中は丸井先輩で埋め尽くされてるようなもんだって改めて思わされました、だからこそ気になって仕方ないんです」

「……」

「川岸先輩、本当は丸井先輩のこと男として見てるんじゃないですか」


そんなことないよ、と、自分でも不思議なくらいにすんなりとは言えなかった。なにかがつっかえているように、言いにくかった。


「……川岸先輩」

「は、はい」

「周りからなんで丸井先輩と川岸先輩は付き合ってないんだ、って聞かれたことあります?」

「…本当に付き合ってないの?っていうのなら、今でも、聞かれるよ」

「やっぱり」

「え」

「それってつまり俺だけじゃなくて、周りから見て、お互いがお互いに恋愛の気持ちを持っているようにしか見えない、ってことだと思います」

「恋愛の気持ち…」

「俺の勝手な推測ですけどね」


違ったらすみません、と付け加えて小塚くんは苦笑いをした。それからのことは、あまりよく覚えてない。小塚くんとはすぐに別れ、確かに家に帰ってきた。けど、わたしの頭の中は小塚くんの言葉でぐるぐるしていた。わたしは、自分で気づいていないだけでブンちゃんを、男の人として、恋愛対象として、見ていた…?いつから?気がつかないうちに?わからない。わからない、けど、ブンちゃんはわたしを恋愛対象として、ずっと見ていた。ブンちゃんがそうであったように、わたしもまた自覚せずにブンちゃんをそう見ていたのか。そう見ていたように見えたから、だから皆から付き合ってないのか何度も何度も確認されてきたのか。そんなことを、ずっと考えていた。






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